王子様とブーランジェール
『なお、勝敗の決定は、完全ノックダウン、これは完全に立ち上がることが出来なくなった場合を指します。あとは降参宣言、タップアウトのみで!これを含め、テクニカルノックアウトは、保健室の麻倉みなみ先生のドクターストップの判断を持って行われます!』
実況のいる長テーブルには、あの麻倉先生が座っていた。
『頑張りまーす!』と、みんなに手を振っている。
その後、俺達に向かって『本当に殺しちゃダメですからねー!』と、言っている。
おいおい。完全に落ちるか、参った言うかしかねえのか?
それか、麻倉先生の『おやめなさい!』だけ?
本当に危険だぞ。この試合。
だから、デスマッチと言われるのか。
しかも。俺、高瀬相手に絶対参った言わねえ。
絶っ対、降参しねえし。死んでも。
『…そういうワケで、ピンチに止めてくれるレフェリーはいないからな?覚えとけバカめ!』
そう言った狭山は俺達を見る。
悪巧みがそのまま滲み出た表情のまま。
すると、高瀬は俺を見て、鼻で笑った。
…はぁ?鼻で笑う?
おまえに鼻で笑われる筋合い無いんですけど!
イライラが一気に頭を突き抜ける。
「あぁっ?!何笑ってんだこのゴリラ!」
思わず絡んでしまった。
「随分と、遅かったな?御大層に準備準備って、おまえは女子か!それとも何だ?本当はビビってんのか?」
「…んだと?!このゴリラ!」
ゴリラのくせに、俺を挑発する気か?
おまえがそこに立ってるだけで、十分な挑発だ!
「ゴリラゴリラって、竜堂、おまえはボキャブラリーがないな?バカの一つ覚えか?」
「バカ?…バカ?ゴリラ目の前にゴリラしか出てこなくて当たり前だろうが!あぁっ?!」
幼稚な口論が始まりかけたところで、狭山がまた間に入る。
『ゴングが鳴る前から口論かおまえらは!…まあよい』
すると、狭山は俺達の前にマイクを差し出した。
『…殺し合う前に、何か言っておくことはあるか?言いたいことがあるならこれで罵り合うが良い!』
は?マイクパフォーマンスでもやるつもりか?
全校生徒の前で、マイクを通して口論だぁ?
よせや。くっだらねぇ。
ちょっと頭に血が昇りすぎた。
マイクのおかげで、冷静になれた。
…ちっ。
こんなもん、さっさと終わらせて帰る。