王子様とブーランジェール
ちっ…!うまくこじつけやがって…!
全校生徒の前で…!
イラッとしていたが。
俺達の口論に乱入してくる輩が現れたのだった。
「…おだまりなさい!このゴリラ男ぉっ!」
女子の通る甲高い声が響いた。
…え?
その声の主は、ケージの外にいた。
木元さんから2、3人離れたところの最前列にいる女子だ。
ゴージャスな縦巻きに、メイクばっちりの女子。
高瀬を睨み付けて、物凄い形相だ。
この人、誰?
すると、その女子は高瀬に対して捲し立てるように反論を続けた。
「黙っていればこのゴリラ空手男!ゴリラ面だからって、夏輝様のお美しいネイルアートに文句つけんじゃないわよ!あんたの毛だらけの足にするよりは断然マシよ!」
その一言を皮切りに、周りにいた女子たちが「そーよ!そーよ!」と、次々と高瀬に噛みついていく。
「ゴリラ男は黙って夏輝様にやっつけられればいいわ!」
「死んでも侘びきれないぞこの重罪ゴリラ!」
だから。この人たち、誰?
突然現れた外野の女子に、高瀬も困惑している。
だが、女子からも堂々とゴリラ呼ばわりされ、カチンときたらしい。
「う、うるせえぞ!外野は黙ってろ!女子のくせに!」
だが、間もなく女子たちに「えー?あー?はぁー?」と、やり返される。
そして、縦巻き髪の女子がここぞとばかりに怒鳴り散らした。
「…おだまりなさいぃっ!このゴリラぁっ!さもなくば、我が家のガス室にぶちこんでやるわよぉっ!!」
「え?え?…ガス?」
ガス室…?
この縦巻き髪…ひょっとして、あの歴史上の有名なマジ卍な集団の生き残りでしょうか…。
ちょっと、気になる…。
『これは、星天高校の新しい王子様、竜堂の熱烈なファンたちでしょうか?!…場外乱闘に注意してください!』
あ、そうなの…。
でも、ファンどうこうより、ガス室が気になって仕方ない…。
我が家のガス室…。
ガス室のことを考えていると、高瀬が鼻で笑っていた。
「さすが女に囲まれてチャラチャラしているヤローだな?だから、おまえは神田さんにはふさわしくない」
「…あぁ?」
今の一言で、ガス室への興味が一気に吹き飛んだ。
俺が、桃李にふさわしくない、だと…?
…ふさわしいと、思ってもらいたいワケじゃねえが。
おまえみたいな、ゴリラに言われたくねえ!