王子様とブーランジェール
またしても、ゴリラに対する殺意が再燃する。
次から次へとこうも人の怒りを煽るようなことを言ってくれるよな…黙っとけやその口!
そんな中、高瀬とバチッと目が合った。
このゴリラの挑発的なツラを目にすると、無条件に殺意が膨れ上がり、爆発寸前になる。
このっ…!
「このっ…クソゴリラあぁぁっ!」
「ふざけろチャラ男おぉぉっ!!」
一触即発。
互いにリングの中央に身を進め、顔を付き合わせて睨み合う。
ゴリラのどアップに吐き気を覚えるが、そんなことを言ってる場合ではない。
「…コラァ竜堂!女子の黄色い声援があって、さぞいいご身分だなぁ?!あぁっ?!」
…え。おまえの怒るポイント、そこ?
「ジェラシー全開でケンカ売ってんじゃねえよ!これだからラブホテルに行ったことがないDT野郎は困るな?!このジェラシーDTゴリラがぁっ!」
「DT!DT?バカにしてんじゃねえぞ!チャラチャラと女囲ってるおまえよりはマシだ!」
「だったら、てめえもメスゴリラに応援してもらえ!あ、おまえ、DTはDTでも人間DTか?メスゴリラとは済んでるワケ!あ、そう!そう!」
「何から何までゴリラで攻めてきやがってぇっ!」
「ホントだ!何でそんなにゴリラなのか、何でゴリラのディスしか出てこねえのか、こっちが聞きてえわ!」
「それは!バカの!一つ覚えだからだ!さぞ頭が良いんでしょうよ?」
「バカ?…バカ?バカゴリラに言われたくねえな?このバカゴリラぁっ!」
「そら見ろ!ゴリラ以外のディスはねえのか!」
「………」
少し、考えてみる。
「林家…ゴリラ?」
「…やっぱり、ゴリラじゃねえかぁっ!竜堂コラァ!」
ゴリラゴリラと言われて飽きたのか何だか知らないが、ゴリラ以外のディスがないことに、高瀬はなぜかキレ出した。
一気に俺の襟に掴みかかってくる。
なっ…キレるポイントがわからねえ!
しかし、高瀬に掴みかかられるのは、どうも癪で頭にくる。
こちらも一気にカチンときてしまい、胸ぐらを掴み返した。
『さっきからリングの上で口論が続いておりますが、おっと!ここでお互い掴み合ってモメ出しました!お互いヒートアップしている模様です!口論の内容は、この席からはよく聞こえませんが、断片的には、DT、ゴリラと!これは高瀬のことを言ってるのでしょうか!』