王子様とブーランジェール
…てなわけで。
長蛇を作っていた女子生徒は撤収していった。
ようやく解放…。
とりあえず、腹減った。
そんなワケで、そこらへんにいた理人を誘って、昼飯を食べに行く。
PTA主宰バザーの会場である家庭科室に向かった。
「へぇー。バザーの食券なんて買ってたの」
「仙道先生からもらった。昨日のファイトマネー」
幼なじみ同士、体のデカい二人が並んで座ってうどんを食べる。
「めんつゆの香り、癒されるわ…」
空腹のあまり、かっ食らってしまったらあっという間に無くなってしまった。
うどん、こんなに美味いとは思わなかった。
今までは味噌汁と同じ、単なる汁物ポジションで見ていたのに。
立派な食事じゃねえか…。
疲れている体に染みるじゃねえか…。
「さっきの夏輝のファン?凄かったな。夏輝様!って、夏輝、様付けで呼ばれてるとかウケるし」
「………」
そこ、突っ込んじゃう?
いや、俺がおまえの立場だったら、間違いなく突っ込むわ。
だが、余計なコメントを避けるため、黙ってしまう。
すると、理人は「黙ってないで何かお言いなさい!夏輝様!」と、先程のガス室女の真似をしてきた。
ホント、真似したくなるよな…。
しかし、あの小笠原麗華とかいうヤツ。半端ないぞ。
あの迫力、あんなに騒がしかった教室内を一気に黙らせた。
ガス室気になるけど…美容ガス?なんだそりゃ。
本当に、あのマジ卍な集団の生き残りじゃないだろうか。
んでもって、午後2時再開?まだ俺にイラスト描かせる気?
でも、それで女子たちは納得して去っていったのか。
誰よりも場内整理が上手いじゃねえか。
で、あの山田フリージアとかいう女…いや、男子も強烈過ぎるの何の。
ちょっとトラウマになりそうだ。
「そもそも何であそこに机出して座ってんの。病院によくいる健康相談コーナーの人かと思った。まさかサイン会とはねー」
「午後は理人、おまえがやれ。うちわにイラスト描いてやれ」
「えー。俺、絵心無いし」
速攻でうどんを食べ終わってしまった俺達は、家庭科室を出てだらだらと教室へと戻る廊下を歩く。
教室に戻ったら、またイラスト地獄か…。
そう思うと、歩くスピードが遅くなり、更にだらだらと歩いてしまった。
「やっぱり、午後からは理人が絵を描け」
「だから、俺、絵心無いし」