王子様とブーランジェール




「は?」



すると、松嶋は紙袋を2つ、俺達の前に差し出してくる。

まさか。これ…!



「男性用の浴衣、二人分あるぜぃ?サイズ大きめだから、ダンナとリッフィーでどうだい?」



お、俺達が?!



「な、何で俺達が!」

突然のオファーに、とっさに反論してしまう。

理人はふたつ返事で「いいよー」と、浴衣を受け取っていた。

は?何でそんなにあっさりと承諾出来るんだ?軽いな。



再び反論しようとすると、松嶋の横にはいつの間にか黒沢さんがいた。

「ほらほら。竜堂くんは昨日休ませてあげたんだから、少しは働いてよね?」

「えっ!」

クラス委員長、有無を言わさず?

って、俺、昨日あんなにイラスト描いたのに!…って、あれはクラス貢献と言うには、ちょっと違うか…。

むしろ、迷惑かけた方であり…。



「夏輝、きっと浴衣は涼しいよ。おまえ、今暑くて汗かいてんじゃん」

「………」



クラス貢献と、涼しく過ごすため。

しぶしぶと浴衣を受け取りました。

そして、最寄りの男子トイレで着替える。

靴も下駄に履き替えて。




その結果。




「おぉー!二人とも雰囲気あるねー!」

「カッコいい…」



教室に戻ると、クラスメイトが集まってきた。

何だ何だ。物珍しいか。目立つか?

これでわたあめ売りに行くんだよ。クラス貢献のために。


「胸キュンシアター、花火大会編作れるな」

「バカヤロー。動画横流しは勘弁だ。もう二度とやんねー」

そんな横流し動画で作られた見せ物小屋は、相変わらず列を作っている。

制服着てない人達が多く並んで…一般の人か?

本当に、何がいいんだか。



「桃李も浴衣着る?」

「え。え、え、え…わ、私は…天パで眼鏡でちんちくりんだし…」

「天パと眼鏡やめたでしょ…忘れてるの?」







そんなわけで。

わたあめ移動販売開始。



松嶋と理人と三人で廊下を練り歩く。

段ボールで作った特製の岡持ちに、わたあめをぶっ指して運ぶ。

大きめのわたあめ、ひとつ100円だそうだ。



「わたあめの移動販売でぇーす!わたあめいりませんかー!ひとつ100円ですぜー!」



松嶋が先頭に立ち、大声でそこらにいる通行人に呼び掛ける。

わかっちゃいたけど、通りすがる人という人に次々と注目を浴びる。

じろじろと見られ…恥ずかしいわ。



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