王子様とブーランジェール




「わたあめー!わたあめいりませんかー!」



すると、すれ違いざまに、知り合いに合う。



「おー。夏輝。何やってんの」

「浴衣着てんの?ヤル気十分だな」



同じサッカー部1年の瑞樹と紘だ。

物珍しそうに、こっちに寄ってくる。



「は?わたあめ売ってんの?売れ残り?」

「売れ残りかどうかはよくわからんが、とりあえずおまえら一個ずつ買っとけや」

「押し売りかよー」

とは言いながらも、付き合いでひとつずつ買ってくれた。

よし。まずは2つ売りさばいたぞ。

向こうでは、理人が同じく男バスの連中にわたあめを売り付けている。

身内攻めりゃ何とかイケる数だ。



だが、しかし。

松嶋のこの一言で、事態が大きく変わってしまう。



「皆さぁーん!浴衣姿のイケメンがわたあめ売ってますぜー!ひとつ100円でござい!」



おいおいおい。松嶋。

余計な情報を撒き散らすんじゃない。

浴衣姿のイケメン?恥ずかしいだろうが。



すると、後ろから突然話しかけられる。




「あのぉ…わたあめひとつください」

「私もひとつお願いしまーす」


私服の女子だ。

もじもじしながら恐る恐るとやってきた。



「あ、はいはい。ひとつ100円です」



お金をもらって、わたあめを渡す。

だが、それだけでは終わらなかった。



「きゃっ!ありがとーございます!」

「お兄さん、イケメンですねー。一緒に写真撮ってもらっていいですかー?」

「は?写真?あ、別に…」

と、言いかけただけで、すぐさま写真を撮られる。

おいおいおい。随分と即撮りだな。



すると、すぐさま、また声を掛けられる。



「イケメンのお兄さん、私にもわたあめくださぁーい!」

「私にも、私にも!」

「はいはい。一人100円で…」

「お兄さん、何年生?!すっごいイケメンなんだけど!」

あからさまにイケメンとか言ってくれるな。

照れというものはないのか、この女子たち。

「写真撮って一緒に!」

女子ってすぐ写真撮りたがるな。何でだ。



わたあめを売り付け、記念写真を撮る。

質問責めに合う。

クラスや名前を聞かれる。



次々とやってくる。女子たちが。

エンドレス。



…おいおいおい。まさか、これ。

うちわのイラストの再来?

またループ出来ちゃってんの?!



しかし、わたあめには限りがある。

最後のひとつ、売れた。

写真も撮ってやった。

これで教室に帰れる。



…と、思いきや。



< 342 / 948 >

この作品をシェア

pagetop