王子様とブーランジェール
談笑しながら、階段を上っていく。
その時、上から階段を降りてくる人とすれ違いざまに、ふと目が合った。
「…あ」
「おっ!夏輝と理人じゃね?」
「久しぶり!」
「お、佑馬と快斗じゃん」
見たことのある顔だと思ったら、中学時代の同級生だ。
三年の時に俺と同じクラスだった奴ら。
どちらかと言えば、ちょっと不良っぽい二人で、こんな学祭に来てるとか意外な感じ。
思わず立ち止まってしまう。
「マジ、来てたの?」
「地元だしな?昨日コンビニで圭織に会って、みんな元気にしてるから来いってさー」
「さっき圭織に会ってきたぞ?サッカー部のマネやってるって。夏輝、毎日一緒か」
「女子マネって初めてだから変な感じ」
理人も含め、四人でついつい立ち話をしてしまった。
すると、松嶋が肩を叩いてくる。
「じゃあ俺、金持って先に戻ってるわ!そのままどっか遊びに行っていいぜよー?」
「お、わかった。お疲れ」
松嶋は俺達から岡持ちを受け取り、手を振りながら先に階段を上って行ってしまった。
相変わらず気が利く野郎だ。
「………」
同級生二人は急に無言になり、階段を上っていく松嶋の背中をじっと見ている。
その様子に違和感を感じてしまい、思わず声を掛けてしまった。
「…どした?」
二人は顔を見合わせている。
そして、口を開いたのは佑馬だった。
「…今の人、夏輝と理人の友達?」
「あ?松嶋か?」
友達…と、いうか。
「うん。慎吾はクラスメイトなんだ」
俺とは違って、松嶋に敵意を持っておらず、むしろ一緒に変態になってしまった理人は、言葉を詰まらせることなく普通に答えている。
「あ、そうなんだ…」
「慎吾がどうかした?」
すると、快斗がちょっと真顔になっている。
え?何で?何だ何だ。
「…あいつ、ヤンキーじゃね?」
や…。
「…はぁっ?!」
思わず、理人と声をハモらせてしまった。
拍子抜けだ。
松嶋が…ヤンキー?
しかし、逆に二人もビックリしている。
「え?違うの?」
「いや。いやいや。間違いないってあれ。紋中のヤンキーだって。フォーメンの一人だって」
「…そうめん?」
「…夏輝、腹減ってんの?フォーメン!『紋中フォーメン』の一人だって!間違いねえよ。俺、あいつ見たことあるって!」