王子様とブーランジェール
「紋中って…白石区の?紋様中?」
「理人知ってんの?そうめん?だか何だか」
そんなすっとぼけたことを言っていると、快斗からお叱りをくらう。
「おいおいおい!夏輝にとってはヤンキーなんてそうめんレベルかもしんねえけどな?『紋中フォーメン』っつったら、そこらのヤンキーは震えあがるっつーの!」
「遭遇して良いことはない、ヤバい連中だっつー話」
その詳細を聞く。
…紋中こと、紋様(もんよう)中学校。
白石区の比較的都会の方面にある地域の中学校。
この中学校は、不良が多く、治安の悪い荒れてる学校として有名だそうだ。
その中でも、凶悪でボス的存在の四人組が、その『紋中フォーメン』。
こいつらは、そこらで弱い者に恐喝したり、万引き…という狡いことをする不良ではなく。
本当のケンカ専門の奴ら。
目を付けられたら、逃げられない。
他校との抗争が絶えず、毎日ケンカに明け暮れている連中で、敵と見なしたものは、必ず滅却。
中には、あのヤンキー高校で有名な皇星高校、市内で一番の暴走族の六心会とモメていたりしていたそうだ。
「皇星の大勢の連中をたった四人で全滅させたとか、六心会の総長や幹部を病院送りにしたとか、ヤクザ半殺しにしたとか…」
ヤクザ半殺し…どこかで聞いたセリフだな。
ヤクザって弱いの?
随分と武勇伝のある連中なんだな。
そんなヤンキーそうめんの一人が、松嶋?
松嶋がヤンキー?
『いーやっほーうーっ!!』
「ないないないない」
思わず即答してしまった。
普段のちゃらけぶりからして、松嶋がヤンキーだとは、考えがたい。
「は、はぁっ?!夏輝、何で!」
「確かにアイツ、紋中フォーメンの一人だって!」
何でって言われても…。
「いや、ケンカ野郎とはどうにもこうにも結びつかねえキャラだぞ。あいつは。見た目はバンドマンって感じだけど」
そのままの感想を伝えてみるが、二人はイマイチ納得できない様子だ。
「いやいや。ちょうど一年前、ダチのケンカに呼ばれて行った時、相手はあいつらで…たった四人で100人近く相手に脅威的な強さでバタバタと…俺、逃げたけどね」
「おいおい。ケンカを前に逃げるなっつーの」
「でも、確かにアイツだ。あの左耳の三連ピアス。鉄パイプを慣れた手つきで振り回して、一撃必殺みたいな…」
「ふーん…」