王子様とブーランジェール
理人も俺と同じで信じがたいのか、それを通り越して笑っている。
「この星天高校はお真面目進学校だよ?進路に96%進学を掲げている高校で、そんな勉強もしないヤンキーが入れる高校じゃ…」
「でも、桃李だって入れたじゃん。勉強もしない桃李が…」
「おぉい佑馬!桃李をヤンキーと一緒にするな!」
思わず佑馬の発言に被せて反論してしまった。
確かに桃李は全然勉強出来なかったのに、この高校に受かったのは奇跡に近い。
年明けから追い込みで勉強を教えてやった甲斐があった。
恐らくギリギリ合格だろうけど。
だけど、ヤンキーと一緒にするな!
俺の反応に、佑馬は苦笑いをする。
「相変わらず桃李のことになるとムキになるな。夏輝は。あ、さっき桃李とそこで会ったぞ?何?同クラなんだろ?告った?付き合った?」
「うるっせえな!何もねえよ!」
またこの質問か!
ヤンキーの話題、すっかり消え失せた。
「あ、そうなのか?何?桃李、高校デビューしたの?天パ眼鏡じゃなくなってるし!すげえ可愛くなってんじゃん!」
「コラァ!何嬉しそうにしてんだよ!」
「あぁぁ。ご、ごめん…そこも相変わらずなんだなおまえ。でも、秋緒と一緒にいなかったら本当にわからなかったぞ?」
「秋緒?来てるの?」
理人が話に入ってきた。
「あぁ。秋緒。さっき桃李と一緒にいたけど?知らなかったのか?」
げっ…。
朝、絶対来んな!と言っておいたのに。
なぜ来やがる…。
それから、二人とはしばらく立ち話したのち。
「じゃあまた」と、手を振って別れた。
去り際に、一言忠告される。
「夏輝は強いから大丈夫だとは思うけど…紋中にはあまり関わらない方がいいぞ?何かとメンドーだからな?」
紋中だろうが、何だろうが、松嶋とはあまり関わりたくない。
ホント、メンドーなヤツだ。
だなんて。
何を考えてるかはわからないヤツではあるけど。
ヤンキー…ってのは、ないだろ。
ヤンキーが、女装してダンスしたり、学校行事仕切ったりする?
いつもおちゃらけていたりする?
ないないないない。
「慎吾が凶悪ヤンキーだなんて、変な感じだな」
「あぁ…」
理人も同じ事を考えていたか。
だよな。普段のあの松嶋を見ていると考えられない。