王子様とブーランジェール



…だけど。

ちょっと引っ掛かることが、ないワケでもない。



『はいはい!暴力反対!』



宿泊研修の時に遡るが。

アイツ…俺の攻撃を見事に綺麗に避わしてんだよな。

あと、あのダーツの腕前とかも…尋常じゃない。

何か、武道でもかじってんのかと、思ってはいたけど…。




「…とりあえず、何か食うか」

「先輩のクラス、ラーメン作るらしいから行く?」



腹が減っては、何も考えられぬ。



とりあえず、理人に連れられて、その理人の先輩のクラスに行き、そのラーメンとやらを食べる。

そこは、優里マネとまゆマネのクラスだったらしく、そこで二人とお喋りを少しする。

まゆマネ…理人にべったりだ。離れない。

そういえば、浴衣姿のままだったもので、まゆマネは一層興奮したのか、理人の写真ばっかり撮っていた。



そして、その3年2組をようやく出た。

その時だった。



「あ、夏輝、理人」



廊下に出たところで、鉢合わせとなる。

そこには、桃李の姿が。



「お。おまえ。ここにいたのか」

「うん。秋緒と一緒に回ってたの」

「へぇー」



そう言って、普通に振る舞おうとしてスルーしようとしたが。

やっぱりコイツが相手だと、簡単には無理だったりする。



「…ちょっと、夏輝くん?」



ヤツの姿をあまり見ないように、通り過ぎようとしていたのに。

ヤツをいないもんとしようとしてたのに。

そっちから話し掛けてくるか…?



話したいことは、家で話せ!

この、腐れ女!



「…あぁ?何だコラ」

ヤツの姿を見ないように対応する。

すると、背中の方から返事が返ってきた。



「夏輝くん…朝、私のパン、また食べましたね?」



ちっ。またバレたか。

日曜日だからって、遅く起きる方が悪いんだよバーカ。

と、言ってやりたいところだが、ここは高校。騒ぐのも何だから、静かにしといてやるわ。

何も言わずに去ろうとしたが、ヤツはまた文句のひとつふたつつけてくる。

「…それに、何なんですか?前夜祭だかで、また試合?ケンカ?したんですか?そんなの聞いてませんよ?お父さんに言いますよ?」

「…はぁっ?!」

思わず振り向いてしまった。

なぜ、それを知ってる!



目の前には、その腐れ女…双子の姉・秋緒が、腕を組んでこっちを睨み付けるように、見ていた。


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