王子様とブーランジェール
黒淵眼鏡から覗くその細くなっている目。
偉そうに俺を睨み付けている。
私はお姉ちゃんよ?みたいな?
5分早く生まれたぐらいで、年上ヅラされてると思うと、また更に腹立たしい…!
女子にしては少し高めの身長のこの腐れ女の出で立ちは…あぁ、やはりその格好できたか。
つば広めの帽子に、ピンクのポロシャツ、チノ素材のキュロットの下には黒いスパッツ…。
山ガールファッションで、学祭に来るんじゃねえ!
山登りする格好で、俺の学校に来るんじゃねえ!
そんなファッションをニュートラルにしているコイツと、双子だとか思われたくねえ…!
やはり、この女だけは、来て欲しくなかった。
双子の姉・秋緒…。
すると、桃李が俺達双子を仲裁するように、話をする。
「な、夏輝…秋緒、LL教室でやってる前夜祭のビデオ上映見ちゃったの…それで…」
そうか。そこが情報の出所か。
いつもと同じく都合の悪いところに興味津々になってんじゃねえよ!
このクソ変わり者が!
姉弟ゲンカの始まり。
「親父に言いたきゃ勝手に言え。あまり俺達に興味がないから、大したこと言ってこねえよ。せいぜい『危ないことはやめようね』ってメールが来るぐらいだっつーの」
「な、何てことを言うんですか!お父さんの悪口ですか!許されないですよ!」
「これが悪口に聞こえるのか!相当な被害妄想だな?病院行ってこいや!」
「ふーん。…あ、あとですね?!」
は?このディスをふーん…で、済ます?!スルーするところじゃねえぞ?
相変わらず掴めない女だな!
「…あ?まだあんのかよ!もう帰れ!」
「あと、何なんですかその格好は。浴衣の胸元随分空いてますね?まるで輩じゃないですか?はしたない!」
バシッ!と指を差してきた。
人を指差すな!…って、あ、ホントだ。
暑くて、いつのまに浴衣の胸元が大きく開いていた。
「だから?何だ?そこをどーのこーの母さんよりうるさく言われる筋合いなんかねえし?会うなり文句と説教なんざ、いい度胸してるじゃねえか!」
俺より輩ちっくな浴衣姿だった松嶋という男の姿を見せてやりたい。
このガリ勉女、卒倒するだろうな。