王子様とブーランジェール
恥ずかしい格好を巡る攻防戦
…どこに行った?
『全校生徒の晒し者にする。恥ずかしい格好で』
…桃李を、どこに連れて行った?
『竜堂…おまえの大事な神田、返して欲しくば、この学校内、見つけてみるがいい…』
…いったい、何を企んでいるんだ!
狭山!
あれから、教室には戻らず。
慌てて校内を探し回るのなんの。
走って走って、走りまくる。
ヤツらは下に降りていった。
まず一番始めに思い浮かんだのは、狭山たちがなぜかいつもいる家庭科室。
3階のフロアまで降りて、家庭科室までまっしぐら。
まっしぐらの勢いそのまま、ドアを乱暴に開ける。
「…狭山あぁぁーっ!!」
しかし、中にいたのは、狭山ではなくPTAのお母さんたち。
バザーの後片付けをしていた。
突然入って怒鳴り散らすという俺の剣幕に、全員ギョッとした目でこっちを見ている。
やばっ…。
「す、すみませんでした…お疲れさまです、お母さんたち…」
と、言いつつソロッと中に入り、家庭科室内の準備室も欠かさずチェックして、何もなかったかのように普通に出ていく。
ヤバい。マズった。
いくら何でもお母さん方の前であれはマズかった。
もし、うちのおかんがいたら、ビンタの一発くだらない。
まったく、どこ探せばいいんだ。
こうなりゃもうローラー作戦で行くしかない。
3階のフロア、しらみ潰しに探す。
化学教室、生物教室に、地学教室などの特別教室をしらみ潰しにあたるが、催しの片付けをしている生徒しかおらず。
狭山どころか、桃李の姿はない。
じゃあ、学年教室。
…あぁ、3年のフロアである3階は、俺にとっては鬼門だった。
「…あれー?竜堂くーん?」
…ちっ!やっぱり見つかったぞ!
女豹に!
「ひょっとして、美央に会いに来てくれたのー?嬉しいー!」
こんな急いでいる時に、俺は全然嬉しくない。
嵐さん!
振り切って逃げようとするが、シャツの裾を掴まれる。
「前夜祭の竜堂くん、カッコよかったぁー。今日一緒に帰ろー?」
「い、いや…今それどころじゃないんで…」
「今日、浴衣着てたんでしょー?遠くから見てもセクシーだったー!ねえ、浴衣デートしようよー?」
「………」
浴衣デートは、おまえとじゃない。
桃李とするんだ俺は!
その桃李を探しに行かねば…!