王子様とブーランジェール
「女子しか参加しないショーに、男子生徒が飛び入り参加したら、その斬新さに中弛み感は消え、観客はさぞ盛り上がる…見事に成功だ!バカめ!」
なっ…!
「だ、だからって何で俺なんだよ!しかも桃李を巻き込んで随分手の込んだマネしやがって!」
「おまえがバカだからだこの竜堂!…おまえに神田をチラつかせたら、否が応でも首を突っ込んでくると思ってなぁ?クックッ…案の定、乗ってきたではないか!」
ちっ…わかってんじゃねえか!
「散々煽ってハメやがったな!このヤロー!」
「たやすく騙される方が悪いのだバカめ!神田もショーの出演を見事に嫌がってくれたしな?!だから、尚騙し打てたってワケだ!」
そ、そうだ…。
あの電話の向こうで、桃李はものすごい悲鳴をあげて助けを求めていた。
だから、てっきり、本当に何かされているもんだと…。
『制服脱がされたあぁーっ!』
…あれは、着替え中だったワケね。ドレスへ。
だからって、大袈裟な…。
「竜堂。おまえの弱点は、見事に有効だな?これでイーブンだ」
狭山はそう言って、あの魔王のような高笑いをしている。
勝利の笑い?
これで勝ったと思ってくれてんなら、安い。
また、ため息が出た。
ふと見ると、桃李はまだそこらへんの床に座ったままだった。
俺が下ろした場所から、動いていない。
うつむいたままでいる。
ちっ。何やってんだ。
まだショーは終わってなく、辺りはバタバタとしている。
そこにいたら、邪魔になるぞ。
「桃李、そこにいたら邪魔になるぞ」
傍に行き、顔を覗き込む。
だが、うつむいたまま、顔が強張っている。
俺の声かけに返答せず、ただ黙っていた。
は?シカト?
ちょっと、イラッときた。
「おまえ、大袈裟すぎんだよ。こんな学祭のショーに出るぐらいで。何でそんなに嫌がってんだよ」
イライラを少し滲ませて、言葉をかける。
すると、その問いかけには反応してきた。
ボソボソと喋り始める。
「…だ、だ、だって、天パで眼鏡でちんちくりんだもん…こ、こ、こんなキレイな服、似合わない…」
は?
…まだ、そのくだりをやるつもりか?!
いい加減にしろ…!
騙されたイライラプラス、このくだりの天丼のイライラで、急に怒りがビキビキと頭に上ってきた。
「…天パと眼鏡はやめただろうがおまええぇぇっっ!!」