王子様とブーランジェール




俺の怒鳴り声は、一層控え室中に響き渡ったのか。

控え室内にいた全員がこっちを見た。

視聴率100%だ。



全員の視線を感じて、我に返る。

し、しまった…。

久々にサンダー落としてしまった…!

しかも、こんなところで。




だが、桃李からは。

いつものような『ごめんなさいいぃっ!』との返答はなく。




「…て、天パと眼鏡やめたって…ち、ちんちくりんは変われてないもん…」

「…あぁ?」

「…み、みんな…て、天パと眼鏡やめたとたんに…かわいいねとか…遊びに行こうとか、言ってくるけど…わ、私、何も変われてないもん…」

「…は?」



そう言って顔を上げた桃李の大きい瞳には。

涙が溢れている。



え…。



「…な、な、夏輝は何でもカンペキに出来るかもしれないけど…わ、わ、私には、な、何もうまく出来ないもん…」




お、俺…?

自分の名前が出て来て、言葉に詰まる。




「…わ、わ、私だって…な、夏輝みたいに、自信持って強気でいたいよ?…で、で、でも…」




涙は、次々と溢れて零れ落ちた。




「…その自信…わ、わ、私には…見当たらないのっ…」




そう言い切ると、泣き声を漏らしている。

それはあっという間に、大きくなっていった。

子供みたいに、わんわんと泣いている。

人目も憚らずに。



「お、おい…な、泣くな!泣くなって!わかったから!」



そう宥めてみるが、俺の声はすでに届いておらず、大声で泣き続けている。

そう言うこっちも、泣くな!と言えば言うほど、心の中はどんどん動揺してきてしまい、どうしていいかわからなくなってしまった。

わかったから!って、わかってねえし…。

あ、あぁ…どうしよう!

どうすればいいんだ…!




「…桃李?どうしたの!」



ここで、ドレス姿の女性が駆け寄ってくる。

桃李の傍にしゃがみこんでいた。

げっ…藤ノ宮律子だ。

何でこんなところに!…って、さっきショーに参加していたか。

藤ノ宮も淡くった様子で、俺と桃李を交互に見ている。

事の状況を把握したのか、こっちをおもいっきり睨み付けてきた。



「ちょっと…桃李に何言ってんのよ!」

「い、いや…」

「何、泣かしてんのよ!最っ低!」





最低…!










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