王子様とブーランジェール
ちっ…くっそ!
じめじめとただ突っ立っているのは、性に合わない。
思いついたらすぐ実行。
やらかしてしまったことは、もう取り消せないから。
でも、大切なのは、やらかした後にどうするかだ。
頭を切り替えて行け。
泣きたい反省会は、もう終わり。
はい、終了!
そう心の内が固まると、話は早い。
次第に駆け出していた足並みは、体育館から引き上げる生徒の波を掻き分けて進む。
波とは逆行して、体育館の中に身を進めた。
人の波を抜けたその先は、ほとんど人が残されていない体育館の中だった。
先ほどまで行われていたショーの会場の後片付けをしている生徒が何人かいる。
勢いで来てみたけど、ここにはいなさそうだ。
じゃあ、どこだ?
さっきの人混みの中には、いなさそうだった。
見落としたか?
「…あれ?竜堂くん、どうしたの」
ふと声をかけられて、一瞬ビクッとする。
そこには、菊地さんが立っていた。
段ボール箱を持って。
「竜堂くん、さっきはありがとねー?狭山さんとの余興、笑っちゃったよー!」
「…あぁ、そう?」
「サッカー部なのに、野球も上手いんだねー」
そんな他愛もない話をしていたが、思いついたらすぐ実行中の俺は、探し人の居所を訪ねる。
「…あ、菊地さん、桃李がどこにいるか知らない?」
「桃李?…確か、出番の後、律子さんと着替えに作法室行ったと思うんだけど…見てない?」
「あ、うん。体育館では見かけてない」
「じゃあ、わからないな。ごめんね」
そのまま菊地さんとは手を振って別れる。
しかし、情報は手に入った。
作法室…あの、茶道部が使っている小さい和室か?
職員室の横にある、小部屋。
時間が経っているから、今いるかどうかは、わからない。
でも、行ってみなくては始まらないと思うから、まずはそこに行く。
体育館を出て、再び廊下を走る。
ケータイで居場所を直接聞こうとも思ったが。
返信がなかったら、もうどうしていいかわからなくなるような気がするので。
もう、体当たりで行くしかない。
それにアイツ、ケータイ見てないことの方が多いからな。
体当たりで、おもいっきり『ごめん』って、言ってやる。
ご希望とあらば、謝罪会見だって開いてやるわ!