王子様とブーランジェール




そのおぞましい寝顔の白目の目元に手の平を当てる。

瞼を手の平でそっと撫でて降ろすと、瞼が閉じた。

ホラーさが無くなった。

普通の女子の寝顔になったぞ。

本当に…せっかく美少女になったのに、白目むいて寝てるなんざ台無しじゃねえか。



白目が無くなり、普通の美少女の寝顔になった桃李の寝顔を、改めて見つめる。



本当に、可愛い顔してんだよな、こいつ。

ロリ系で、アイドル好きのヤツにはどストライクだと思う。

だから、あのカオスなうちわの状況もわかる。

俺は正直、アイドル系よりは、モデルのようにスタイリッシュでオトナな感じの方が好みなんだけど。

だけど、現実と好みってヤツは、全然違うもので。




ロリ系だろうが、モデル系だろうが、関係なく。

俺にとっては、今、ここに横たわって寝ている、こいつが一番かわいい。

一番、いいんだ。



たまに、おぞましいホラー顔になるけど。



肌…白いな。

日焼けなんてしてない。

外でアクティブに遊ぶよか、ずっと屋内でパン焼いて過ごしてるからな。

頬っぺたもほんのりとピンクだ。

柔らかそう。

そんなことを思って、左の頬を指で突ついてみる。

や、やわらか!

ぷにっとしていたぞ!



ち、ちょっと。

頬擦りしてみたい…!



新たなる野望ができてしまった。





外では、花火が連続して音をたてて鳴っており、同時に生徒らの歓声も響いている。

空はすでに薄暗くなっていて、一層花火の輝きが映えていた。



そんな花火の轟音をバックに。

寝ている桃李の頬を、指でぷにぷにと触りながら、これまでのことを思い返す。



5年という月日は、とても長く。

いろいろあったな…。

高校に入学してからも、いろいろなことがあったというのに。

毎度見当たらなくなるケータイは、ほぼ毎日探してやって。

ドジをやったら、雷落としながらも助けてやって。

何でもかんでも、駆けつけて。

大量のパンの荷物持ちをしたり。

絶壁から滑落したら、助けに駆けつけて。

何度も転んだら、抱き上げて連れていってやって。

ゲロ吐きそうになったら、トイレに連れていってやって。

ゴリラに狙われた時は、幼稚な口論で応戦して。

騙されてエロいブラウス着せられた時は、ベストを貸してやって。

寝不足でぶっ倒れた時は、保健室まで運んでやって。


まだまだある。


< 387 / 948 >

この作品をシェア

pagetop