王子様とブーランジェール
って、俺。
結構、いろいろ頑張ってない?
桃李を助けるために、実は、だいぶ頑張ってない?
好きでも何でもない女を、こんなに駆けつけて助けるヤツ、いる?
いないよな?
さすがにそろそろ、気付いて欲しいんだけど…。
…と、思う反面。
これじゃ、まだまだ足りないんだろうか。
だなんて、思ってたりして。
頑張らなければならないのは、行動よりも態度。
そんなことには、少し気付いている。
好きだということは、隠していなくても。
恥ずかしいだの、再起不能になるだので、それを口に出して、伝えていないんだから。
伝わるワケはないんだ。
気付くワケもない。
ちょっとの勇気を出して。
もう、あともう一歩踏み出していかなければならない。
俺、歩幅小さいな。
小さかったのか。
でも、さっきの不意討ちのキスと本人が聞いていない告白で、ちょっと開き直っている自分もいた。
俺、これからは攻めていけるかもしれない。
ずっと頬を触り続けてしまっており、なかなかやめられない。
そのうち桃李が「いたい…」と、寝言のように呟き始めた。
さすがに触りすぎた。
顔だから、腫れたり色が変わったりすると大変だ。
惜しいけど、もうやめる。
パッと手を離した。
すると、触られていた頬を自分の手でゴシゴシと擦っており、またパタッと眠りの続きを始めた。
そんな桃李の様子を見つめながら、熱くなったままの胸の奥に、新たなる決意を掲げる。
…桃李。
覚悟しとけよ?
『幼なじみ』でもなく、『友達の弟』でもなく。
『男』として、おまえに意識させてやる。
さっき、おまえが気付かなかったキスと告白は。
今度、おまえの意識がある時に、面と向かってはっきり言ってやる。
もう、恥ずかしいとか照れくさいとか、言ってられない。
もう、想いは抑えられないし。
誰にも渡す気はないし。
おまえにとっての、一番の男に。
たった一人のかけがえのない人に、なりたいから。
そして、いつか。
その白くて柔らかそうな頬っぺたに、頬擦りする。
…これは、余計だったかな。
でも本当に、覚悟しとけよ?
どんどん打ち上がる花火の閃光が、この小部屋に灯りとして差し込んでくる。
そんな『決意』を胸に。
振り返って、その花火を見上げていた。