王子様とブーランジェール




「は、花火は?!」

「さっき、終わったぞ」

「えー!」

桃李の目が急にウルッとなった。

先程の件もあり、泣きそうになるのはビクッとさせられる。

「は、花火、見たかったのに…何で起こしてくれないのー!」

「お、起こした!何度も起こしたっつーの!ずっと寝腐ってたのは、おまえだろうが!」

「ええぇぇ…」

「俺は見たけどな」

「ええぇぇずるいぃぃ…」

かなりガッカリしている。

たかが学校祭の花火だろうがよ。

なぜそんなに見たかったんだ。




「まったくおまえは。花火なら、来週河川敷の花火大会あるじゃねえか。そっちの方がすごいって」

「来週?」

「…あ、そうだおまえ、来週の金曜日…」




すると、突然。

部屋の電気が、パッと着いた。

そして、ガラリと障子のドアが開く。



「桃李、起きて!…えっ?」



急にズカズカと入ってくるなり、こっちを見て驚きながらも眉間にシワを寄せた顔を向けてくる。

げっ…こいつがここに来るか?



「あ、律子さん」

「桃李、起きてたの?」

「はい。夏輝に起こしてもらったんです」

「…は?」



そう言って、再びこっちを見てくる。

おもいっきり睨み付けて。

藤ノ宮律子…。



「…ま、いいや。桃李、今日はもう解散だから、帰ろ?」

「あ、はい」

そう藤ノ宮に言われて、桃李は身の回りに散らかした自分のものをせっせと片付けている。

それを見守っていた藤ノ宮だが、またしてもこっちを睨み付けながら、桃李に聞こえないぐらいの小声で呟いてきた。



「…あんた、ここで何してたのよ」

「…は?」

「…電気もつけないで、何してたのよ」



そう言って、再び、俺を睨み付ける…。



しまった…。

俺のやったことはバレてないとは、思うが。

すごく後ろめたい…。

暗いのに、電気つけてないって、怪しまれるよな…。





どうやら、俺は。

この女には、あまり良く思われてないようだ。

ちっ。俺だっておまえを良く思ってねえよ。

最低呼ばわりしてきたしな。

やたらと桃李に付きまとってくるし。(←ここが大きい)

…しかし、夏休み後に、この女との一悶着が始まることは、この時点では想像が付かず。




「っていうか、あんたいつまでいるのよ。ここは着替え室なんだけど?」


さっきから、ホント突っかかってくるな?!








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