王子様とブーランジェール




桃李のことを思い出すと…昨日のあのこともセットで思いだしてしまった。

朝っぱらから…。

恥ずかしくなって、顔が熱くなってきた。



昨日はなかなか眠れなかった。

思い出しては、恥ずかしくなっての繰り返しで。

終いには、部屋に入ってきたピンクに『聞いてくれ…桃李とキスしちゃったんだよ…』と、話を聞いてもらった…というよか、勝手に一人で喋って、勝手に一人で盛り上がってしまった。

犬にしか話せないとか、終わってんな。俺。



だが、昨日の件で開き直ってしまった。

これからは、ガンガン攻めていく。

照れるとか恥ずかしいとか言ってる場合じゃねえ。



まずは、花火大会。




あと。

天パ眼鏡やめたことを忘れたくだりをもうやらないように。

『おまえはもう天パ眼鏡じゃない…』と、耳元で何回も呟く。




だって、またサンダー落として嫌われるのは、もう嫌ですから。





「万智さん、今度夜勤いつ?」

「明日。あ、夏輝んち行くかな」

「来る?じゃあチャーハンパーティーするか」



二人で談笑しながら、教室に向かおうとしたが。

体育館の傍にある掲示板の前に、大勢の生徒が集まっているのに気付いた。

何やら掲示板に貼ってある掲示物をみんなで見ているようだ。

「あれ何?みんな何みてんの」

「さあ。写真販売でもやってんじゃね?それより明日、何チャーハンにする?」

「じゃあネギダレで」

あまり気に止めず、その場をスルーした。



「そうだ。母さんが美味しいワインを手に入れたから、紫季さんとこに持ってくって言ってた」

「は?やめとけやめとけ。毎晩あれだけ呑んだくれていたら、味なんかわかんねえって。マリアのくせに」

「その名前で呼んだら怒るだろ…」



談笑しながら階段を上がろうとする。

すると、上から柳川と菊地さんが降りてきた。



「あっ!おはよー!竜堂くん、和田くん!」

「おう、お疲れ」

「おはよ」

朝っぱらから随分元気だな。

挨拶をして、また理人との談笑に戻る。



だが。



「…ん?何?」



柳川と菊地さんは、俺と理人をじっと見ている。

何か、驚愕の視線?

何…?



「竜堂くん、和田くん…体育館の掲示板、見た?」



柳川が俺達の顔色を伺うように、下から見上げている。



「掲示板?何だそれ」

「あの人集まってたやつ?」

「えっ!」



二人とも、声をハモらせてビックリしている。

な、何で?



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