王子様とブーランジェール



薔薇に例えられて、何とも困惑した状態にさせられる。

今の俺、体の半分薔薇色じゃなくて、真っ白になっている気分だ。

薔薇じゃなくて、脳内の思考回路がバラバラになりそうだわ。



すると、至近距離での気配を感じた。



『夏輝様っ』

『…わっ!』



気がつくと、山田フリージアが俺の左側から顔を近付けてくる。

さりげなく左腕を掴まれていた。

そして、腕に体が密着し…。



ゾワゾワゾワッと一気に寒イボに襲われた。



『は、は、離れろ!ち、近い!』

『夏輝様ステキぃー』



いくらステキと言われても!

男にすり寄られて黙っていられるはずがない!

山田フリージアの、どアップを見てしまった。

こいつ、やっぱり鼻の下青い…!

こんなものを至近距離で…トラウマになる!



そこで、小笠原麗華が山田のケツにおもいっきり蹴りを突っ込んでいた。

ドカッと音をたてて、山田が少しよろめく。



『何してるのおやめなさい!フリージア!この黒豚饅頭女!夏輝様に触るんじゃないわよ!誰の許可を得て密着してんのよ!』

『そーだそーだ!抜け駆けは厳禁よ!』

『夏輝様はあんただけのモノじゃないのよ!』

『チャーハン食い過ぎてんじゃないよ!少しは痩せろ!』

『あぁー。ごめんなさぁーい。美しい男の人見るとついー』

『本能のまま動いてんじゃないわよこのケダモノ!』

小笠原を皮切りに、バックにいる皆の者が次々と山田にブーイングを浴びせる。

山田は悪びれる様子もなく『えへっ?』と笑って誤魔化している。てへぺろー?みたいな。

しかし、山田のふくよかさはチャーハンが原因か。



俺の目の前でモメ始めた女子連中。

これ、仲裁に入るべき?どうやって?

女子同士のモメ事、ただ呆然とするしかない。

どつき合って、言葉責め。すげえ迫力だ。

男とは違う。



その光景をただ呆然と見守り、困っていると、またしても小笠原が俺の前に出てきた。



『そういうワケで、夏輝様。もしあなた様に仇なす輩がいらっしゃいましたら、我が家のガス室にぶち込んで差し上げますので、何なりとお申し付け下さいませ』

『は、はぁ…』

いいの?使っていいの?

じゃあ手始めに高瀬のゴリラを…。

『あと、ファンクラブを結成し、サポートをより強固たるものにしていきたいと思っております…』

『はぁっ?!ファン…それだけはやめてくれ!絶対にやめてくれ!』




非っ常に、めんどくせー!!



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