王子様とブーランジェール
『あぁ?何だ?ケンカならしねえよ!ったく、いつでもどこでも絡んできやがって!』
今回は先手を打って忠告しておいた。
小笠原たちのこともあるし、今後教室に来客は勘弁だ!うるっせえ!
しかし、狭山はまた笑う。
『はははは!…そうだな?今後おまえに絡むこともケンカ売ることは二度とない。おまえはミスターに就任したしな?私が負けたことなど御破算だ』
『…え?』
ミスター就任で、そんなにあっさりと?
もう今後、ケンカ売ってこないの?
だとしたら、良い特典だ。
拍子抜けする。
しかし、この狭山のことだ。
やっぱり嘘ー!なんてことはあり得る。
ったく、何を言い出すんだ。この偉そうな小型犬は。
イマイチ信用できない。
疑惑の視線を向けているも、狭山は話を続けていた。
『…その代わり。何か困ったことがあれば、私達に遠慮なく頼るがいいぞ』
『は?』
急に何を言い出すのかと思えば。
困ったことがあれば、頼れと?
何これ。
俺ともヤンキーの和解、みたいな?
何だこれ。相手が狭山だけに、気持ち悪いな。
悪巧みしてそうな。
まあ、大半の困り事は、おまえが絡んでこなくなったら解消だ。
『…私ら先代ミスターのファンクラブの残党はな?先代ミスターにミッションを頼まれておるのだ。「次のミスターが困っていたら、助けてあげなさいよ?」的な?』
『…はぁっ?』
何だそれは。
ミッションと言う割には軽い感じだ。
近所のおばさんからの頼まれ事みたいな。
くっだらねえ…。
何が何だか、おちょくられてる気分だぞ。
どいつもこいつも、いじりやがって。
疑惑の視線を狭山に送り続けていると、教室からひょっこりと顔を出して現れた。
「狭山さん、おはようございます!」
「…あぁ?何だ。神田か」
俺のかわいい桃李を何だ呼ばわりするな。
桃李が教室から廊下に出て来て、俺達のところにやってくる。
…こいつ、狭山が来ると必ず出てくるな。
「神田、昨日はおつかれ。大失態、大転倒」
「もう!狭山さん、急に無理なことやらせないでください!あんなの出来ませんから!」
桃李が狭山に物申している。
また…!
「…何だとこのバカめ!サプライズに対応出来なければ、立派な大人になれんぞ!覚えておくがよい!」