王子様とブーランジェール
「だってだって!やったことないですもん!モデルも野球も!練習してないのにあんなの出来ないぃっ!」
「は?は?野球をやったことがない!おまえは人生の半分を損しているぞ!あんなドラマチックな奇跡を信じてみたくなるスポーツ、他にはないではないか!」
「や、や、野球はやったことないですけど、ハイターズの試合は家族で見てます!」
「じゃあ出来るだろうが。永嶋拓哉の芸術的な素晴らしいゴロさばき、毎度見ておるのだろう!」
「み、み、見てるだけでできませんって!…狭山さんっ!」
着信が来たのか、狭山は再びケータイを開いて歩き出す。
桃李は物申しながら、狭山に着いていき、向こうの方に行ってしまった。
何だ何だ。
桃李って、狭山のこと気に入ってるのか?
今、俺のこと目に入ってなかったよな?
あんなに狭山狭山って…負けた気分。
ミスター就任のおかげで、昨日の余韻に浸る間もなく。
道のりは長いな…。
その後、片付けも終わり。
部活前に、教室で咲哉たちと弁当を食べる。
理人や陣太も部活があるらしく、他のクラスの連中ともご一緒していた。
その時のことだった。
『おい、竜堂!』
また来客!
…ではなく。
仙道先生だった。
わざわざ教室に戻ってきたようだ。
『先生、何すか』
仙道先生は弁当を食べている俺達のところにやってくる。
通りすがりに、クラスメイトの内藤に『はい先生あーんして』と、卵焼きをひとつ食べさせてもらっていた。
『…おっ。内藤の卵焼きうまいな。…って、竜堂、生徒会が呼んでるぞ。生徒会室行ってこい』
『は?生徒会?』
『なんで生徒会?』
咲哉が、俺の顔を見る。
『さあ…』
『ほら。あれあれ。ミスター就任についてだろ?きっと。あんまり面倒事起こすなよ?』
先生はそう言って、忙しそうにすぐに去って行ってしまった。
生徒会が俺を?
と、さっきの狭山の話を思い出した。
生徒会室に行って聞いてみるがよい?って。
ミスター就任特典について。
やはり、お呼びだし、きた…。
…と、いうワケで。
生徒会室でお話を聞いて。部活に遅刻。
木元さんに抱擁され続けていると、グラウンドから野次が飛んでくる。
「ミスター!重役出勤ですか?!」
「っつーか、ミスターなんだから、今度はおまえが俺達を合コンに誘ってくれやミスター!」
大河原さん、合コンは絶対にしません。誘いません。開催すらしません。