王子様とブーランジェール
「皆さん、すみませんが、準備までに5分ほどお待ちください!」
桃李はそう言って、ライオン丸ヘアーを後ろにひとつにまとめている。
俺達が持ってきた紙袋から、物を出して準備をしていた。
「桃李、何か手伝うか?」
理人がすかさず、桃李に話しかける。
しかし、
「ううん、いいの。理人は座ってて。ありがと」
と、目も合わさず、準備に夢中だった。
さて、いったい、何が始まるのか。
理人の持ってきた袋、やっぱり食器だったぞ。
中から食器が登場した。
すると、そこでまた、家庭科室のドアが開いた。
「おはようみんな」
姿を現したのは、昨日も会ったあのギャルだ。
菜月。
「菜月おはよー」
「おつかれー」
「おはよう。あら、ライオン丸、もう来てたんだね」
すると、桃李が離れたところから「おはようございます!」と、挨拶している。
今、思ったんだけど。
桃李、どもってない。
マジでライオン丸で定着しているが…。
「…あれ?」
菜月が、俺達の存在に気付いた。
こっちを見てニコッと笑っている。
「…ライオン丸と一緒に来たの?無駄にイケメン1号と2号」
えっ。俺達の呼び名もそれで定着しつつあるの?
ビミョー…。
「え…あ、はぁ」
「嘘うそ。ごめんね?和田理人くんと竜堂夏輝くん?」
微妙だということが、顔に出てたんだろうか。
しかし、見た目はギャルなのに、この落ちつき様は、なんというか。ギャップがある。
何で獣のような狭山とつるんでいるのかが不思議…。
すると、菜月はバスケットにパンを並べている桃李のもとへ寄っていく。
「ライオン丸、お客さん全部で7人だけど大丈夫?」
「大丈夫でーす」
お客さん?!って?
まだ増えるの?
って、桃李、バスケットなんて持ってきてたのか?
すると、またしても家庭科室のドアが開いた。
「おっはようございますぅー!先輩がた!」
次に姿を現したのは、小柄な女子生徒。
パッツン前髪で、巻き髪の女子生徒だ。
手には大きい工具箱?!
2つも抱えている。
「美梨也おつかれー」
「お疲れさまです!」
連中を先輩と呼んでいるあたり、二年か。
一年では見ない顔だ。
みりや…変わった名前。
「おう、美梨也。おまえ、何持ってきた?そのデカブツ」
狭山は元の席に戻っており、ケータイをいじっている。
ケータイをいじりながらも、美梨也の持ってきた工具箱が気になったらしい。
「…あ、そうそう。狭山さん、いいものが手に入りまして!見てください!」