王子様とブーランジェール
竜堂アマゾネス軍団
…暑い。
暑い。暑い。暑いぞ。
せっかく髪も切ったのに、まとわりつく前髪が邪魔。
姉のヘアゴムで、前髪を縛る。
ちょんまげみたくなってしまった。
8月の真夏の炎天下。
北国って例年、夜になると涼しいし、お盆近くになると急に寒くなる。
…だが、今年の札幌は一味違うようだ。
内地のフェーン現象の影響をモロに受け、平均気温がグッと上がる。
真夏日どころか、とうとう猛暑日も出現。
この地での猛暑日、しかも連続5日とかはまずあり得ない。
あり得ない…!
インターハイも終えて、8月もお盆に差し掛かる頃。
ようやく部活も休みとなり、夏休みらしい夏休みを送れそうだ。
だが、しかし。
帰札すると、連続猛暑日が待っていた。
外出すると一気に汗が溢れ出て、大変なことになる。
流れる汗が顔を伝い、一層不快感が増す。
スーパーに行っただけで、Tシャツもすぐに汗だらけ。
極度の暑がりの俺にとって、これは事件だ。
家から出られない…!
リビングのエアコン全開。
しかし。
「…ちょっと夏輝!朝っぱらから冷房ガンガンたかないでよ!すごく寒いんだけど!」
「体が冷えて仕方がありません。やめてください」
姉たちに文句を言われる始末。
女子の多い家族には有りがちな戦い。
これが寒い?どうかしてるぜおまえら。
外出なんて命懸けだぞ。
うちには犬もいるんだ。
ピンクが脱水起こすぞ!
しょうがないので、姉たちがいる間はピンクと一緒に我慢する。
そして、バイトやら部活やらにそれぞれ出掛けた後、一気に冷房全開にする。
冷たい風に当たりながら、だらしなくソファーに寝転がる。
…あーっ。涼しい。生き返る。
昨夜は札幌では珍しい熱帯夜だったので、寝苦しかった。
今、昼寝しようかな。
…あっ。ピンク、腹の上に乗って来るな。
暑い。暑いだろうがぁっ!
ソファーの上でうとうとしながらも、ピンクは俺から離れない。
何回も腹の上に乗ってきたり、腕をカリカリと掻かれる。
…あぁ、おまえ。散歩行きたいのか。
でも待て。今行ったら、お互い暑さで死んでしまう。
夕方まで待て。待つんだ、ピンク。
とりあえず、昼寝…。