王子様とブーランジェール
「桃李、まだですか?早く来て下さい!」
「あ、ごめん!」
またしても秋緒の急かす声がして、桃李は慌ててウッドデッキの方へと赴く。
秋緒は窓を開けてひょこっと顔を出していた。
ったく。せっかちな女だな。超合金女。
腰掛けてサンダルを履く、桃李の背中を見つめる。
こいつ…。
(………)
…いや、フランス行ってる間。
ブーランジェリー巡りしたっていうし、ごはんも美味しかったと言ってたし、恐らく食い倒れ状態だったのだろうから、仕方ないのだろうけど。
こいつ、太ったな。
夏休み前と比べて、顔がふっくらとしている。
全体的にも多少ふっくらしたような。
…いや。いやいや。
俺は言わないぞ?
そんなデリカシーのない男じゃない。
それに、このぐらいの増量は許容範囲内で、むしろ、頬っぺたを触りたくなってしまったぐらいで…。
あっ。ちょっと、ギュッとしてみたいかも。
しかし、デリカシーのない超合金女が、それをサラッと指摘をし、桃李が泣いて喚くハメになるのは、今から30分後のことであった…。
鍋を含めて、ジンギスカンの材料一式を持って、外に出る。
すると、カーポートに、黄色いコンパクトカーが車庫入れをしていた。
えっ。今?
今、帰ってくる?
「お、お父さん!お父さん帰ってきましたよ!」
秋緒は席を立ち、一目散にカーポートの方へと駆け寄って行く。
超合金女、今日は忙しいな?
「夏輝、ひょっとしておじさん帰って来たとか?」
「うん…」
もう、夏休みも終わり。
しかし、これから始まる二学期は、このまったりとした夏休みとは違って。
目まぐるしい騒動だらけとなってしまうので、ある…。
baKed.6 eNd
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