王子様とブーランジェール
「…オホホホ!これだから、あばずれは困りますわ!考え方が低能で!…おあいにく様ですが、私達は夏輝様に対して、そんな邪な肉欲溢れた目で見ておりませんので、悪しからず」
今度は扇子を開いて、口元を隠して笑い始めたぞ。
筋金入りの高笑いなのか。
「は、はぁっ?!肉欲溢れたって…何気取ってんのよこのお嬢様ぶった女!」
「お嬢様ぶった女ではなく、本気のお嬢様でございます?美貌も知性も財力も強さも持ち合わせておりますわよ?」
「バッカじゃないの?!自信過剰過ぎない?!」
「…おだまり!この肉便器女!…愛し合った?あなたは、酩酊状態の男の前で、股を開いただけでしょうが!」
「ま、股を…何ですって!」
「殿方の性本能という弱味につけこんで、汚らわしい!このドブ枕営業女!そんな汚らわしいあなたに犯された夏輝様を何回消毒すれば綺麗に浄化されるのか教えて戴きたいものですわ!」
お嬢様の割には、ものすごい発言が飛び出したぞ。
肉便器とか、ドブ枕営業とか…。
…って、俺も消毒されるとか、泣きたい。本当に泣きたい。
その話、みんなの記憶から消えるまで消毒してほしい。
もう、その話本当にやめてくれ。
メンタル滅多刺しだ。
懺悔したい。懺悔。
「…言わせておけば何なのよ…この高飛車女っ!」
散々罵倒され、怒りが蓄積されている様子の嵐さん。
鬼のような形相となり、プルプルと震えていた。
「…いい加減にしなさいよぉっ!!」
積もりに積もって、ついに小笠原目掛けて手を振り上げて掴みかかろうとする。
お、おい!
開いていた扇子が、パン!と大きな音を立てて閉じる。
そして、掴みかかろうとした嵐さんの右手を、小笠原はその扇子で軽快に弾いた。
「…痛いっ!」
嵐さんは、扇子で弾かれた右手をとっさに引っ込めて抱える。
その隙に、顔面真っ正面スレスレに、またしても扇子の先をビシッと突き付けられていた。
「…いぃっ!」
まさかの返り討ちに、嵐さんは驚愕の表情をしながら扇子の先を一点凝視している。
「あら…ごめん遊ばせ?」
小笠原は、不敵な笑みを浮かべている。
そして、返り討ちに言葉も出てこない嵐さんに、更なる忠告をするのだった。