王子様とブーランジェール



桃李の呼び掛けで、ギャル達が一斉にパッと同じ方向を向いた。


「皆さん、セッティング終わりましたー!こちらにいらしてくださーい!」


桃李が奥のテーブルから両手を振っている。


「やった!パンだ!」

「楽しみー!」


優里マネや潤さんを含め、ギャル達は一斉にテーブルの方へ駆け寄っていった。

狭山、ドリル持ったままだ…。


そして、歓喜の声があがる。


「うわぁー…!」



パンのひとつやふたつで、こんなに喜ぶものか?

そう思って、俺もその現場に赴く。



(ほぉ…)



その現場を目にしたら。
歓喜の声もわかる。



テーブルの中央には、バスケットにはセンス良くに重ね盛られたクロワッサンとくるみパン。

ピンクの小花柄のランチマットか敷いてある。

その横には、切り分けられたイギリス食パンがカッティングボードの上に並べられ、傍にはパッケージのお洒落なジャム類も置かれていた。

アップルパイがホールごと木製の皿に乗せてある。

サーモンピンクのお皿が一枚ずつ人数分並んであり。

ピンク系の柄のランチマットとカトラリーがセットで
並んでいた。

ミントが添えられたアイスティーもグラスに注がれてピンクのストローか刺さっている。



いつも授業で使っている家庭科室のテーブルが。

ちょっとしたカフェになっちゃってる!



「皆さん、お待たせしてすみませんでした!ミスターさんの投稿を再現してみました!…とは、言っても、狭山さんがアップルパイとピンクがお好きだと言ってたので、ちょっとアレンジも加えました!」



なるほど、そういうことか。

だから食器類持参…。



「か、可愛い…!」

「おしゃれすぎ…!」

「マジやば…!」



ドリルについて語り合っていたり、モメていたギャル達が一転。

感激の眼差しで、そのテーブル上の光景を見ている。

中でも、まゆマネは一番興奮していた。



「可愛い可愛い可愛い可愛い…萌えるぅーっ!!パンも美味しそおぉぉーっ!!食べるうぅーっ!!」

「バカまゆり!食べる前に写真だっつーの!」

パンにいち早く手を伸ばそうとしていたまゆマネの後頭部に、奈緒美が後ろからチョップを入れる。

「うわぁー!インスタ映えインスタ映え!」

「マジいっぱい撮る!やば!」


ケータイを一斉に取り出すギャル達。

いろんな角度からの撮影会が始まったのである…。



目的はパンだけじゃなく、これだったのか…。



< 44 / 948 >

この作品をシェア

pagetop