王子様とブーランジェール
ミスター出てこいや!
「…どんなヤツにやられたんだ?」
「…え?」
「服装とか顔の特徴とか、何人でいたか、どこでやられたか…詳しく教えてくれねえか?!」
「な、何で…?」
怒り高ぶったあまり、勢いあまって質問責めをしてしまった。
相手の男子生徒はビクついてちょっとひいてる。
しまった。
廊下には予鈴が響いている。
そんな中でも、取り急ぎ男子生徒から話を聞くことが出来た。
「あの…聞いてどうするんですか?」
俺に疑問の目を向けて、顔色を伺って聞いている。
一瞬、言葉に詰まるが、抱えている本音ははっきりと言ってやった。
「出来るかどうかわかんねえけどよ…犯人がわかればぶっ潰す」
「えっ!」
「…いや、出来るかどうかわかんねえけど。だって、俺が原因だろ?俺に出てこいって言ってんだし」
「はぁ…」
そして、男子生徒のケガの状況も聞いて、あまり大したことないと聞かされて。
話しはそこで終わった。
(ちっ…)
最近、突如として舞い込んでくる、度重なる事件。
見えない敵に怒りを覚えたまま、教室に入る。
「ねえねえねえねえ、夏輝!」
教室に入るなり、笑顔で俺の前に現れた。
俺のプチマシュマロ。
いや、あれから熾烈なダイエットを重ね、昨日は2㎏痩せたと喜んでいたので、もうプチマシュマロではなくなった。
「おはよう。何だ?」
「あ、あ、あのねっ」
しかし、学校でこんなに元気よく俺に話しかけてくるなんて、珍しい。
いつもはおどおどしながら顔色を伺って、なのに。
まさか、誕生日だから?
もしそうなら嬉しい。誕生日万歳。
だけど、桃李が話しかけてきてくれて、張り詰めていたものがほどけた感じがした。
何だか、ホッとさせられる。
「あのねって、何」
「あ。あのね…」
自分から話しかけてきたくせに、何だか言いづらそうにしている。
でも、顔はニヤニヤとにやけている。
「ご、ごめん。プレゼントの中身、横川くんたちと見ちゃったの」
「は?」
顔を上げて向こうの方角を見ると。
理人や陣太たちが、貢ぎ物の袋をまだ覗いていた。
俺の机の上にひとつずつ並べてやがる…こらっ!