王子様とブーランジェール

夜の学校と夜道には気をつけろ









…それは、昨日の話。

俺が、ファンとのプレゼント贈答会も終了して、仙道先生に車で送ってもらっている頃の話だった。



咲哉は、部活終了したのち、俺とファンとのプレゼント贈答会に笑いを堪えながらも学校を後にする。

学校の目の前にあるバス停からバスに乗り、終点の真駒内駅で地下鉄に乗り換える。

そこから地下鉄に揺られ、自宅最寄りの駅、中の島駅で降車した時のことだった。




『咲哉、今帰り?』

『…あ、田仲。おまえも?』



改札を出ると、偶然にも同中であり、高校では違うクラスのヤツと出くわす。

8組の田仲。

背が低めで、ちょいと地味系な男子。いわゆるモブ。

『俺は札駅の本屋に行ってたんだ。今帰ってきた』

『へぇー』

二人で世間話をしながら、階段を上がる。



地上に出たところで、二人は別れる。



『俺、サツドラでおやつ買って帰るわー。じゃあ田仲、またな。おつかれ』

『うん、また』



そして、咲哉は少し歩いてサツドラに向かい、おやつとジュースを買って店を出る。



(…ん?)



しかし、道路を挟んだ向こうの歩道で。

先ほど別れた田仲を見かける。

しかも、田仲一人だけではない。

周りには、制服を着崩したガラの悪そうな不良ともとれる見てくれの男子校高生が三人。

田仲を囲むようにして、一緒に歩いていた。



あれ。田仲の家、そっちの方向じゃねえよな。

しかも、周りにいるヤツ、誰?

ここらでは見たことない顔だし。

第一、仲良さそうに歩いておらず、田仲は背中を丸めている。



まさか…。



と、ピンときたという。




まさかこれは、一連の《ミスター出てこいや!》事件なのでは?

そう思うと、横断歩道を渡り、彼らの後を追った。



店が立ち並ぶ街灯の多いメインストリートから一本、中に入ると、そこは灯りが少なく、住宅もない人通りも少ない場所である。

そして、薄暗い公園の隅で、見つけた。



『コラァ!星天狩りだ!コノヤロー!』



そう怒声をあげて、人の殴られる殴打の音がした。

そこには、田仲が二人に手を押さえつけられ、逃げられないようにされており、一人がバコバコと田仲の顔や腹を殴っていた。



やはり!…マズイぞこれ!




身を隠しながら忍び寄る。

…真っ正面から加勢しても、相手は喧嘩慣れていそうな不良だ。あっという間にやられるのは目に見えている。

やられるのはやられるでも、一矢報いてやらねば。



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