王子様とブーランジェール
スタートラインに立て
そんなワケで。
ギャルとのお茶タイムが始まった。
ずらりと向かい合って並んで座る女子7人。
よく見ると、全員、顔面偏差値が高い。
長い付き合いの潤さんは、美人な人だと前からわかってはいた。
優里マネも、目が大きくて顔が小さい可愛い系。彼女の争奪戦は大変だったと彼氏の木元さんが話していたのを聞いたことがある。
まゆマネも童顔であどけない可愛さがあり、加えて巨乳とくりゃ、俺達一年生の間でも人気。
奈緒美は大人系だな。シャープな印象。私服だったら、高校生には絶対見えない。
美梨也は髪が派手で、アイメイクがすごい。ティーン誌のモデルのようだ。
菜月はギャルの中でもナチュラルな感じ。だが、何を考えてるかわからないポーカーフェイスな雰囲気がある。
そして、狭山。
こいつは、ギャルの最骨頂だ。
髪がど派手すぎる。
だが、顔は小さく、アイドル系で目が大きい。
きっと、この中では一番の上玉だ。
さっき気付いたけど、こいつ小さい。
身長150ないぞ。
なのに、あのパワー、どこから出てくるんだよ…。
「…で、先代ミスターのファンクラブってのは、ここにいるのは坂下さん以外ということなんですね」
優里マネ以外、全員手を挙げている。
理人の「先代ミスターのファンクラブのメンバーはどなたですか?」と、いう質問に、ギャル達は「はーい」と素直に手を挙げていた。
「私は彼氏いるもん。違う違う。みんなといるのはただ楽しいから」
優里マネは首を横に振っている。
いや、それでよかった…。
もしメンバーだとしたら、木元さん可哀想だよ。
それを聞いて奈緒美がパンをちぎりながら反論している。
「その彼氏がいるっていうの理由になんなくね?だって、エリも美梨也も彼氏いるし」
「そうだそうだ!優里沙だって先代がお素敵だって言ってたでしょー!」
まゆマネも一緒になって文句を言っている。
しかし、聞き逃さなかったぞ。
美梨也はともかく、狭山に彼氏がいるっていうのを…!
狭山の彼氏、どんなヤツ?!
こんな暴れん坊だぞ?
武装化してんだぞ!
金属バットの存在、彼氏はどう消化してんの?!
しかし。
まゆマネがファンかもっていうのは、ここに来てから何となくわかってはいたが。
「…潤さんも?」
「そうだよ」
素直にうんうんと頷いている。
マジか!
「先代は素敵な御方だよ。あの人を越える人は絶対いない。っていうぐらい、超神がかってる」
そう話す潤さんの顔は、ややうっとりしていた。
おいおい。
潤さんまで…こんな極道連中の一員だったとは。
付き合い長いのに、気付かなかった。
でも、潤さんって…確か。
「…あれ?潤さん、有馬先生のことは?」
「先代と有馬先生は話が別!」
しっ!と口止めされる。
リアルとこの話は別ってこと?
わかんねえ…。
「私達は、先代ミスターのファンクラブの『残党』だよ。ファンクラブは先代の卒業と共に解散した」
狭山はそう言って、一口大に切ったアップルパイをフォークにグサリと刺した。
「先代の御意向で、私達はファンクラブの名前を名乗ることも、先代の名前を学校で口にすることも禁じられている」
そして、そのアップルパイをパクっと食べた。
「え?何でですか」
「先代の御意向だからと言っとるだろうがバカめ。私達はその御意向に従う他、選択肢はないのだ」
なんという忠誠心だ。
「まあ、事情を知らない一年生とかに気を遣ってのことじゃないの?先代はお優しい方だったからねー」
「あぁーミスターに会いたいー!何してるのかなー?」
「今日も仕事じゃない?」