王子様とブーランジェール
「うわぁ…マジ?」
「これが噂の?ブリアンシャトー?」
「さすが高級品。輝いて見えるわ…」
「っつーか、早く食べない?もう塩コショウしてんでしょ?」
その高級品・シャトーブリアンが乗っかっている皿を上から覗き込む俺達四人。
初めての出会いに、言葉が何も出ず。
四人で頭を付き合わせて、しばらく見つめてしまった。
そんなことをやってるもんだから、顔馴染みのテキサスの店長に奥から怒鳴られる。
「おぉい、夏輝!もう塩コショウしてんだから、さっさと焼いて食え!網あっためてんだろ?!」
「あ、はい!すみません!」
そのまた翌日の土曜日。
DVD売上還元パーティー兼俺の誕おめパーティーで、学校の裏の商店街にある焼き肉屋さん、テキサスに、陣太と咲哉、理人と有言実行で来た。
度々高校のイベントの景品となる、焼き肉食べ放題チケットはここのお店でのモノらしい。
俺は、ここは町内会の区域だし、家族で来たこともあるし、少年団の打ち上げでも、中学校の打ち上げでも使ったことがある。
そして、ここの店長さんは、俺が小学生の時に入っていたサッカー少年団のコーチだったりする。
ホントにホームというか…。
「早く食べようって。夏輝、焼いて」
「おまえ、主役に焼かせる?」
「自分で焼かないと気が済まないくせに。お奉行さま」
よくわかってるな…さすが長い付き合いだけあるわ。理人。
その高級品・シャトーブリアンを、肉ばさみでつまんで網に乗せる。
このジューッっていう肉を焼く音がたまらんな。
食欲そそられる。
肉肉…。
「A5ランクの米沢牛だってよー」
「マジ?証明書とかついてんの?」
陣太は肉の皿の横にあった薄目の紙切れを開いて読んではビックリしている。
「さすが小笠原様々だな。オガサワラリゾート」
「………」
…この、シャトーブリアンは。
咲哉と陣太のDVD売上で購入したものではない…。
小笠原麗華と愉快な仲間達が、俺に誕生日プレゼントとして贈ってきたものである…。
『夏輝様!私達からはシャトーブリアンをお贈り致しますわ!』
そう言われたのは、誕生日の朝。
…ええ、教室前で長蛇の列を作られたあの直後。
『いや、別にいいわ…』
食べてみたいが、正直にお願いしまーす!なんて言えるワケないだろ。そんな高級品。