王子様とブーランジェール
すると、俺の貢ぎ物整理をしていた咲哉が口を挟む。
『えっ!俺達もシャトーブリアンプレゼントしようと思ってたのに!土曜日テキサスで焼き肉パーティーすんだよ?』
おっ。これは断る口実になりそうだ。
よくぞ話に入ってきた。
しかし、セレブはその上を行く。
『あらー。ご友人の方々は財布を懐に引っ込めて下さいな?こういう値の張るものは、お金持ちに出させてください?パーティー会場の住所と予約時間、教えてくださいな?お店側にお話してお贈りさせていただきます?』
そう言って、高笑いをしながら扇子を開いていた。
パーティー会場っていう程のモノじゃ…。
予約もしねえし。
しかし、昨晩、テキサスの店長であるコーチから家に電話がきて、それはリアルなものとなってしまった。
シャトーブリアンとその証明書に、小笠原たちからのバースデーカードも添えられていた。
お誕生日おめでとうございます。
これで、ご友人とのお食事会を存分にお楽しみ下さいませ?みたいな。
まるで、そこに小笠原がいるようなカードだった。
「この肉と出会えたのも夏輝様々だな…夏輝様!お肉を取って下さいませ!」
「理人、おまえ小笠原のモノマネ気に入ってるだろ」
文句を言いながらも、言われた通りに焼けたシャトーブリアンを皿に取ってやる。
「A5ランクですわ!オホホホ!」
いい加減、やめろ。
「そういや、小笠原、ファンクラブの名前をどうするか考えてたぜ?『名案募集致しますわ?』って、あの後話フラれたわ」
「…はぁっ?!」
咲哉、それはまことか。
ファンクラブ…あれほど結成するなと言ったのに!
めんどくせー!
…まあ、俺はあの集団を心の中では『小笠原麗華と愉快な仲間達』と呼んでいるが。
「それはもう『竜堂喜び組』でいいんじゃない?」
「理人。何かそれいやらしいな…」
それは、本当にやめてくれ。
もはやファンクラブではない。違う団体になってしまっている。
「でも、A5ランクの美女揃いだしな?竜堂喜び組。小笠原とか鈴木羽菜とか。2年の金村さんも可愛いじゃん」
「山田も男のくせに、女以上に女してるしな。本名・山田文二郎」
ふみじろうだから、フリージアなのか?
「竜堂だからよー。『チームドラゴン』とかカッコいいんじゃねー?」
「横文字いっちゃう?」
陣太。それは、心臓の手術をする団体…。またしても違う団体だ。
やはり、小笠原麗華と愉快な仲間達で行こうや…。