王子様とブーランジェール



咲哉にサクッと仲裁され、口論は終わりとなる。

しかし、想定外の新事実に、胸がドキドキしていた。

俺の知らないところで…!



「でも、柳川って明らかに夏輝狙いだったよね?すげーわかりやすく。何で慎吾になったの?」

柳川には、席が隣っていうのもあって、よく話しかけられた。

二人でどこか出掛けない?なんて、しょっちゅう誘われていた。

その気はないし、誘われている時はだいたい桃李が視界に入ってくる。

なので、すべてお断りしていたけど…。

あれは、狙われていたのか。



「んー。何か、イベント効果?学祭の準備でいつも一緒にいただろ?二人で学校サボってダンスの振り付けのDVD作ってたり。あの日、二人でパンケーキ食べに行って、DVD編集とかで二人で慎吾んち行って…で、柳川もベッドの上で編集される。みたいな?」

「ベッドの上で編集!」

じゃあ、あの時からすでに…!

「…で、極めつけに、後夜祭の花火打ち上げの最中に、教室でしてしまったらしい。花火をバックに立ちバックで」

「………」

それ、際どいぞ。そこらへんにしとけよ?

教室で花火をバックに…想像しちまったじゃねえか!

「…と、そこにちょうど、慎吾を探していた藤ノ宮が乗り込んでくる」

「マジか!」

「事は終わった後だったけど、まあ、わかるだろ?雰囲気や状況からさ?それで、藤ノ宮、爆ギレ。それから慎吾は藤ノ宮にめっちゃしつこく付きまとわれているらしい。夏休み中に柳川には同中のカレシが出来て、関係が終わったにも関わらず、慎吾は未だに藤ノ宮から監視されてるという…」

「へぇ…」

「今日も、夏輝との親睦を深めたいから行きたかったんだけど、また藤ノ宮を怒らせちまったそうで、ここに着いてきそうな勢いだったらしく、今日は断念。てなわけ」

「なぜ俺との親睦を深めたいんだアイツは」

「夏輝ともっと仲良くしたいんじゃね?」



すると、そこへ理人が素朴な疑問を投げ掛ける。



「でもさー?何で慎吾は藤ノ宮律子のいうこと聞いてやってんの?二人は付き合ってるワケでもなしに、なぜ監視されてんの?」

「さあ…それはさすがにわからん。いろいろと難しい関係だって言うのは前に言ってたけど」



確かに。

これで付き合ってないのなら、これは単なる藤ノ宮のストーカーだ。



『…ダンナの「幼なじみはいろいろと難しい」は、俺も共感できるかな』



アイツも、幼なじみにいろいろこじらせてるのか。



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