王子様とブーランジェール
後夜祭の花火をバックに…って、おい、また想像しちまったじゃねえか。
だけど、その頃同じくして、俺と桃李も作法室で二人きりに…って、あの時同時進行で実は教室でそんなことが起こっていたのかと思うと、恐ろしい。
俺達の方が、まだ可愛いじゃねえか。
後夜祭終了後に、藤ノ宮は作法室に乗り込んできたが。
あの時、松嶋と柳川の現場に乗り込む前だったのか、後だったのか…。
女って、恐い。
いや、藤ノ宮が恐い。
と、いうか。
松嶋…柳川とそんなことになっていたとは、ビックリだ。
教室でもお互い普通に仲良くしてるだろ。気付かなかった。
と、いうことは。松嶋はクラスの仲良い女子を、お友達を平気でペロッと食べることが出来てしまう輩ということになる。
と、いうことは、桃李だって…危ない!
もはや、食べられているかもわからん!
桃李とはお友達とは言っていたが、お友達でも平気で手を出す輩だということが、わかってしまった。
松嶋、まだ気を許せないぞ。俺は。
「…夏輝、何真顔になってんの。ひょっとして、今の柳川の話を聞いて、桃李も危ないとか思ってんの?」
「………」
理人、なぜおまえは俺の考えていることがわかるんだ…!
「慎吾、かわいそー。信用してもらえてなくてかわいそー。夏輝と仲良くしたがってるのにかわいそー」
「…やかましいわ!こざかしい!」
ったく、何なんだよ。
…でも、こうやって、そんなバカみたいな話をしながら、笑えて。
今日、良かった。
最近、ちょっとピリピリしてたから。
…いや、この後たぶん、その話になるんだろうけど。
「…そういや夏輝、俺が送った写真と動画、見た?」
網の上のカルビをひっくり返しながら、咲哉は俺をチラッと見る。
「まあ、うん…」
先日、咲哉が目撃した襲撃事件の犯人の写真と動画。
何度も見返してみたが。
「どう?心当たりある?」
「いや…知らねえヤツだ。やっぱり」
どこのどいつだドイツ人、といったところだ。
「俺もその動画と写真、見せてもらったけどさ。制服、どこの高校かわかんないね。第二高校の制服に似てるけど、あそこは進学校でヤンキーいないしょ。ヤンキー高校って言えば、皇星か古陽?」
咲哉に取り分けてもらったカルビを、理人は米の上に乗せながら言う。
「別の件では、大学生風のヤツもいたんだろ?犯人像って見えねえな」
「『星天狩り』か。ゲームかよって」