王子様とブーランジェール




中村のおばちゃんとの遭遇で、だいぶタイムロスをしてしまった。

角を曲がって、パンダフルの前に到着する。

だが。



(…あれ?)



店内は電気が点いておらず、真っ暗のままだった。

ショーウィンドウを覗き込んでみるが、奥の住居スペースにも電気が点いていない。

桃李の両親はプロ野球が大好きで、シーズン中はお店を閉めてご飯を食べるとすぐに、ケーブルテレビ契約している酒店に集合して、商店街のみんなとナイター中継を見るらしい。

苺さんたちは酒店に行ったんだろうか。

でも、桃李は陣太といるはずなのに…まだ帰って来てないのか?

だいぶ時間かかってるぞ。

遅い。



でも、とりあえず、店の前で立って待つ。



学校から5分の距離なのに。

あの連絡からあれからだいぶ経ってるぞ?

何してんだあいつらは。



まさか、俺、騙された?



…な、ワケないか。

俺達、友達だよね…?



なぜ、遅い…。

誰かと遭遇したのか?

俺のさっきの中村さんみたいに。



誰かと…。



『そういやさっき、ガラの悪い男の子たちが歩いていたのよー!』

『星天高校どこだ?とか邪魔だクソババアとか言われちゃってねー?なっちゃんも絡まれないように気を付けてねー?』



ま、まさかな…?



だって、あれは地下鉄を降りたところで…って。

ここは、地下鉄とは反対方向…。

そして、人気のない場所に連れてかれ…。



(…あっ!)




嫌な予感を察してしまったら、それはもう頭から離れず。

そこから、無意識に駆け出していた。




『たぶんそのうち、奴らはシッポを出す。早いうちにね』



まさか…。



『だって、ミスター出てこいや!って言ってんのに、こんなことちまちまずっと続けていないと思うんだよ』



まさか、ここで?!

そんなこと、ある?!




横断歩道は赤信号だが、車が走ってこないのを確認して走り抜ける。

嫌な予感を抱えたままの胸を抱えて、いつもの慣れた学校への道を走り続けた。



…うちの学校に出入りできる入り口は、正門の他に南出口と西出口がある。

だいたいはみんな正門から出入りするんだけど、地元に住んでる俺達は、正門とは反対方向の近道である西出口を使う。

しかし、その西出口は、防風林が衝立のように立っているマンションの駐車場と空き地に面しており、人気もなく夜は暗がりとなってしまう。




もし、そこで遭遇したとなれば…。

でも、何でここで?!


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