王子様とブーランジェール



すると、隣の席に座ってる女子が俺に話しかけてきた。

「ねえねえ竜堂くんってすごく頭良いんだね!今度私にも勉強教えて!」

「…あー。今度ね」

それとなく返答すると、その女子(…柳川ったっけな)は、「やった!」と軽くガッツポーズをした。

そんなに嬉しい?

すると、少し離れた席から女子のコソコソとした話し声が耳に入る。

「竜堂くん、イケメンで背も高くて勉強出来るなんて、超やばくない?」

「んでもって、サッカー部でしょ?彼女いるんだっけ?」

「っつーか、柳川さん勉強教えてとかって!」

「えー!ずるい!私も竜堂くんに教えてもらいたい!」

ったくよぉ…人の聞こえるところで、まあこそこそ話を…こそこそ話になってない。

すると、すかさず、陣太も「俺も俺もー」と、女子の口調を真似している。

思いっきりイジられている…。




テスト返却も済み、授業が始まる。

何となくまた俺は再び、空をボーッと見つめだした。

再び、朝の出来事を思い出す。




(塩クロワッサンか…)



朝のあの香りは。

塩クロワッサンか。

あのバター強めの匂い、やはりクロワッサンか。

しかも新作?塩?

どんな味すんだろ。

パリパリしてんのか?しなしなしてんのか?!

そう思うと、何だか食欲出てきた。



(食いてえ…)



パン、食いてえな。



朝のあのパンの焼き上がりの匂いを思い出す。

あーっ。たまんねえ。

もう一度匂い嗅ぎたい。

無類のパン好きの俺としては、新作の塩クロワッサンの正体が気になって気になって仕方ない。

三度の飯はパン、おやつはパン。

それでも良いくらい、パンが大好物。



ちくしょう。食べてえ。

桃李、焼いたパン持ってきてねえのか。

あーっ。もう。







(塩クロワッサン…)



だいぶ気になるぞ。その正体。

だって塩パン+クロワッサンだろ?

うまいことシンクロしてんのか?


桃李、出来はどうだったんだ?!



ふと、前の方の席にいる桃李の方を見る。

ヤツは…大口を開けて寝ていた。

あぁ…遅刻した挙げ句に、1時限目から寝てんのかよ。

しかも、顔を伏せてさりげなく寝てるワケじゃなく。

思いっきり天井仰いでガッツリ寝てる。

このアホが…。



しかし。



(塩クロワッサン…)



気になって気になって仕方ない。

塩クロワッサンも、そうだけど。

それだけじゃなく…。



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