王子様とブーランジェール
先代ミスターからのミッション
最近頻発している、星天高校の男子生徒を狙った一連の襲撃事件。
交通機関を降りた直後に人気のないところへと拉致されて、集団でボコられ、シメには《ミスター出てこいや!》という紙を渡されるという、もろに俺が絡んでいるという、痛ましい事件だったが。
今宵とうとう、学校の近くで、陣太と桃李が狙われてしまう。
だが、引き返してきた松嶋が不良軍団を一掃し。
とうとう…加害者を捕まえた。
「…あー。もしもし。俺」
「ちょっと待ってて」と言い、突然、松嶋はポケットからスマホを取り出し、電話を始めた。
急に電話し出すとは。どうした。
「…あー。狭山さんのケー番、教えてくんない?…あ?一緒にいる?ちょっと代わって…もしもし。松嶋です…」
…は?狭山?
何で狭山に電話してんの?
おまえら仲良かったの?
疑問を持ったまま立ち尽くしていると、背後からがさがさと足音が聞こえてくる。
振り返ると、そこには上下黒のスウェット姿の理人がのらりくらりとこっちに向かって歩いてきた。
「おつかれー」
手を振ってこっちにやってくる。
「おつかれーってなんだ。随分緊張感ねえな。何で来た」
「陣太が連絡くれてさー。慎吾が犯人捕まえたって。これから美恵センパイと会う予定だったけど、こっちの方が面白そうだったからドタキャン」
「宮下先輩とまだ続いてたのか?…じゃなくて、まだ犯人と決まったワケじゃないぞ」
正確には、犯人の手掛かりとなる加害者を捕まえた、だ。
「理人、来たか!」
陣太が理人の登場に気付いてこっちにやってくる。
おまえ…わざわざ野次馬増やすなっつーの。
「おつかれ。陣太、ケガないの?」
「俺は大丈夫なんだけど…」
そう言って、桃李をチラッと見る。
桃李は陣太の後ろにひっそりと立っていた。
「桃李、おでこ…泣いてんの?」
理人が桃李のケガに気付いたようだ。ついでに…泣いていたことも。
泣かしてしまったのは自分のせいなため、ちょっとソワソワしてしまう。
「ケガは連中と揉み合ってやられたんだけどさ。泣かしたのは夏輝」
陣太、そこははっきり言うな!
チクるな!
「ふーん…?」
やはり。理人の視線が痛い。
後で何か言われる。絶対何か言われる。
めんどくせー…。
「…あ、はい。じゃあお待ちしてます。じゃ」
松嶋がようやく電話を終えた。