王子様とブーランジェール
今度は何の動画だ?
まさか…ラブホテルの中の出来事じゃねえだろな?
もしそうならホントマジで困る。
今度は警戒心を持ち、睨み付けるように画面を見た。
画面にはファイルのアイコンがズラリと並んでいる。
菜月がエンターキーを押すと、そのアイコンは次々と写真に変わっている。
これは…?
写している部分が一定で動かない。
一見、監視カメラの画像だ。
「これは、監視カメラの画像です…学校の」
予想通り…じゃない!え?!
今、何て言った?!
全身がザワッとした。
菜月を恐る恐る見る。
目が合って、ウフッと笑いかけられる。
「が、が学校の?」
「ええ。この学校の監視カメラです。私特製の小型監視カメラ」
そ、そんなもの作っちゃうの?
「…何で?」
「嵐とミスターの一件があってから、あちこちに付け始めたんです。ミスターに何かあってからじゃ遅いと思いまして」
「………」
カメラ、何個あるんだ?
嵐さん…何したの?
こんなに大事にされているミスター、どんな人?
と、純粋に思い始めてしまった。
「まあ、今となってはミスターもご卒業されましたし、ただの暇潰しです…あ、あったあった」
画面が切り替わり、動画が再生された。
こ、今度は何?
俺絡み…でしょ?
「竜堂くん、入学してからは、学校で三人の方に告白されてますね?そのひとつの映像がこれです」
写し出された場所は、廊下の端。
階段の踊り場だ。
そこに現れたのは、男子生徒と女子生徒。
男子生徒はやはり…俺だ。
女子生徒は…あ、えーと。名前何て言ったっけな。
二年生だったはず…。
あぁ…あの件か。
1週間くらい前だったかな。
相手の名前は思い出せないが。
内容は何となく思い出した。
これは、確か、昼休み中の出来事だ。
『竜堂くん、取り込んでいたのに呼び出してごめんねー?』
『いや、いいっすけど、別に…用件なんすか?』
監視カメラの映像から音声が。
随分とはっきり聞こえるな。
菜月特製小型監視カメラ…。
騒いでいた連中は一気に静かになり、俺の後ろで画面に釘付けだ。
理人まで…。
「うわっ。夏輝、態度冷たっ」
「………」
それは…この映像の前に、俺の身勝手な事情がありまして。
向かい合わせで話している俺と二年生女子。
女子の顔を思い出した。
アッキーナそっくりだったような。
「…あ。あぁぁっ!こいつ、10組の磯貝じゃん!」
美梨也が急に叫びだした。
び、ビックリした。
知り合いだったか。
『竜堂くん、彼女いるの?』
アッキーナ似の二年生が、モジモジしながら話し出す。
映像の俺は、ちょっと落ち着かない様子でいた。
『え?…いや、いませんけど?』