王子様とブーランジェール
「どうした紋中ヤンキー。まさかおまえも律子同様パトロールに参加したいのか?あぁ?」
ニヤニヤと松嶋の顔を覗き込んでいる狭山に、松嶋は軽く頷く。
えっ…おまえ、手伝うの?!
「張り込みと情報収集、手伝わせてもらいますよ。白石区厚別区方面は全部俺に任せて。ダチ動かすから。ついでに先輩や昔の仲間にも市外の情報収集当たってみます」
「ほう、ヤンキーネットワークか。それは頼もしいぞ!バカめ!」
狭山はなぜか大爆笑している。
「慎吾、やっぱり手伝ってくれるの?ホント?!」
藤ノ宮がそこへ戻ってきた。
笑顔で嬉しそうに、松嶋のもとへ寄っていく。
「あのなぁ律子。別におまえに頼まれたからとかじゃねえぞ?」
「えっ…」
「自分のせいで事件が起きて悩んで困っているダチのために、俺は一肌脱ぐんだ」
「………」
そう言って、松嶋は俺を見てピースする。
って、さっきからダチのためにと言ってるが。
松嶋にとって、俺は友達なのか。
そうか。そうだったのか…。
悪くは…ないかな。
しかし、そんな松嶋の傍で。
俺のことをおもいっきり睨み付けている女子が一人。
眉間にシワを寄せ、怨念のこもったするどい眼力で、顔をピクつかせながら、怒りをあからさまに顕にしている…!
睨み付けながら、小声でブツブツと怨念を飛ばすように、独語している。
藤ノ宮律子…!
ホント、嫌われてるな…。
しかし、嫌われている理由、ちょっとわかったかもしれない。
そういうことか…。
「さて、終わった終わった。まだ時間あるから、部活に顔出すかな」
理人がケータイを見て時間を確認して言う。
そうか。思ったよりも早く終わってる。
「じゃあ俺も部活行くか。っつーか、おまえはサボりだろ?」
「会議あるんで遅れまーすって、言っといたけど」
「………」
会議は会議だけどな。
すると、家庭科室のドアがガラッと開いた。
「みんな!ただいまご到着だよー!」
そこには、外出中のまゆマネが登場した。
しかし、大量の荷物を抱えている。
「…おっ!竜堂!…あっ!和田くん!来てたのー?やぁーもうー」
「まゆマネ、それなんすか…」
挨拶する間もなく、その様子について尋ねてしまう。
まゆマネの両肩には何本ものバットケースがぶら下がっていた。
少し太めのバットケース。ビヨンド専用?
野球部のマネになったのかと思った。
「…あ、これ?武器武器。武器だよー!」
「ええっ!」
残党、まだまだ謎が多い…。