王子様とブーランジェール
桃李の机の上にあるペットボトルが。
いつの間にか横に90度に倒れている。
先程、購買で買ってきたレモンティーだ。
500mlフルに入っていた中の飲み物が、ドバドバと床にこぼれ落ちている…!
かなりの勢いで流れ落ちている。
それはまるで滝のようだった。
当の本人は気付いていない。
ペットボトルの存在自体忘れて、おしゃべりに夢中だ。
惨劇が繰り広げられていた。
もちろん、黙って見過ごすことは出来ず。
『…桃李!レモンティー!レモンティー!』
おもむろに立ち上がって、指を差し、桃李に呼び掛ける。
すると、体をビクッと震わせる。
『な、夏輝、な、何?』
そして、慌てて立ち上がろうとした。
ば、バカ!急に立ち上がるな!
その瞬間、度重なる惨劇が起こった。
『…ぎゃあぁっ!』
桃李が立ち上がった反動で真横にひっくり返っていたペットボトルは、とうとう落下。
しかも、慌てていたので、変な反動がついて、ペットボトルは回転しながら落ちていき。
レモンティーの水溜まりの中へ勢い良く落下していった。
ペットボトルの落ちた衝撃で、辺りにレモンティーが跳ねまくる。
周辺の床だけではなく、桃李のカバンや足元もレモンティーまみれ。
辺りは地獄絵図となった。
当の本人はパニっていた。
『…え?え?レモンティー?なくなっちゃった!消えた!』
…無くなったのではなく!
消えたのでもなく!
おまえの不注意で床に全て流れていったんだっつーの!
注意喚起をしたにも関わらず!
なぜ被害が広がる!
『桃李ぃぃっ!おまえぇぇーっ!!』
『ご、ご、ごごごごごめんなさい夏輝ぃっ!!』
いつものように、雷を落とした後。
掃除用具箱から、バケツと雑巾二枚持ってくる。
桃李に雑巾を一枚渡して、二人で床のお掃除タイムとなった。
『夏輝、ごめんなさい…』
桃李はしくしくとしながら、雑巾で床を拭いていた。
『わかったわかった。もういいから、ちゃんと拭け。一回一回雑巾絞れ…おまえ!雑巾絞らないから、床びしゃびしゃのままじゃねえか!ちゃんとやれ!』
『は、はい!』
辺りの机をよけて、雑巾でこぼれたレモンティーを吸い取る。
地道な作業の繰り返し。
『ただ拭いただけじゃ床がベトベトのままだからな。終わったらもう一回水拭きするぞ』
『はい…』
『んっとに何でこんな…』
だなんて、文句を言いながらも。
こんなカタチでも。
桃李との一緒の時間は実は…嬉しかったりして。