王子様とブーランジェール
投網って…漁で使う、あの網?
「狭山さん、最近投網にハマってるみたい。投網を丸めたものを1mぐらいあるバズーカに詰めて、発射すると風圧で飛び出したと同時に網が開いてターゲットを狙って動きを封じるって感じ。動きさえ封じちゃえば、女の集団でも男をボコれちゃうんだ」
ボコれちゃうんだって…。
狭山が投網にハマってるって…どういう経緯で投網なんかにハマるの?
あいつ、夜釣りでもすんの?
…だが、その投網で不良どもの動きを封じる作戦は見事にジャストミートしたという。
すぐさま現場に急行した二人。
奴らの後をつけていた二人とも合流。
すでに、うちの男子が人気のない建物の陰に連れて行かれて囲まれている。
『美咲、私が合図したら背後から狙って』
『…え?り、律子さん!』
そう言って、藤ノ宮が飛び出す。
…右手に木刀を持って。
「…木刀?」
「律子さん、剣道の有段者なんだよ」
「………」
だから、あんな自信満々にこいつらに加担していたのか…。
『…ちょっと!やめなさいよ!』
飛び出した藤ノ宮が声をあげて、不良どもの注意を引く。
『…あぁ?』
一人の男子生徒を囲んでいるの緑ブレザーの不良三人は、一斉に藤ノ宮を見る。
しかし、女子高生が木刀をこっちに向けて構えているのに、一瞬怯んでいたという。
その隙を、見逃さない。
『…やぁっ!』
間に入り込んで、うちの男子生徒を背に庇い、クソ不良どもに向けて木刀を大きく振り回して威嚇する。
『うわっ!』
『何だこの女!』
太刀筋をかわして後退する不良ども。
だが、狙いはそこだった。
『…美咲!今だよ!』
『はい!』
藤ノ宮の指示通り、奴らの背後に向けて投網バズーカを発射。
投網はあっという間に放射状に広がり、不良どもに覆い被さる。
同時に、藤ノ宮は男子生徒を連れてそこから離れた。
『…うわっ!何だこれは!』
『はぁっ?!…網?!』
『動けなくなったよ!みんなでボコれ!』
投網で動けなくなった不良どもに、メンバー一斉に襲いかかる。
持っていたカバンやそこら辺に落ちていた一斗缶などで力の限り叩きつけた挙げ句。
地元に住んでいた尾ノ上さんの知り合いの女子小学生が、自転車で駆けつけ、爆コギそのまま不良を捕まえた投網の不良目掛けて、なぜか自転車ごと突っ込んだ。
恐い。やり過ぎだ…。