王子様とブーランジェール



「その単車ゴロゴロヤンキー集団のバヤセを牛耳る者は『総長』と呼ばれ、多くのヤンキー生徒を従えています。その総長がこちら。早瀬高2年、八上真秀です」

「マシュー?…ハーフ?」

「いえ、純日本人ですよ」

菜月が画面をスクロールすると、写真が出てくる。

金髪ロン毛だが、顔はおもいっきり日本人だ。

多少イケメン…かな?

マシューというよりは、ローランドもどき?なりきり?

でも、目付き悪っ。

不健康そうだ。

「これが摩周湖?」

「北海道の透明度の高い湖じゃありません。マシューです。やがみましゅう」

もうマシューも摩周湖もいいわ。



これが場痩せ…もとい、バヤセの総長。

しかし、菜月の口から語られる事情に、度肝を貫かれる。



「このマシュー総長が、今回の黒幕です」

「…え?」



いきなりのフリに、ちょっと思考が着いていかない。




…え?

これ?この人?

この摩周湖の兄ちゃんが、黒幕?

この腹痩せ総長が?こいつが…!



…こいつが、この腹立たしい襲撃事件の黒幕!



俺を挑発し、何の関係もない生徒らをボコボコにした…黒幕がこいつ!

そのなりきりもどきの写真を今一度見る。

腹立たしく、一気に怒りが込み上げてきた。



「…何でだよ」



思わず、怒りが滲み出て言葉になる。



「…何で、このなりきりもどきの金パヤローに絡まれなきゃいけねえんだよ!あぁ?」

「それは、逆怨みー?なのだ」



俺の怒りの叫びに、いつもの調子で答えたのは、松嶋。

女子の波を掻き分けて前に出る。

菜月の持っているタブレットの画面に映っているなりきりもどきのマシュー総長を指差した。



「この襲撃事件を企てた理由は、逆怨み。竜堂のダンナに対する嫉妬」

「…あぁ?」

嫉妬?…身に覚えねえし!

それに…そんなもんで!

そんなもんでなぜ、何の関係もない生徒が巻き込まれなければならない!



「…このマシュー総長には『姫』がいる」

「…姫?」

お姫様?

「まあ、総長の彼女。総長の彼女だから、姫。と呼ばれてる」

姫っていうから、どこぞの国かと思った。

ガクッとくるわ。



「…しかし、この総長の…バヤセの姫は、ある日突然、別の男に恋に落ちてしまった。その相手が、竜堂のダンナ」

「…はぁ?!」

俺に?…なぜ!

姫とか知らねえし!



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