王子様とブーランジェール
「…わかった。社員に連絡する」
そう言って狭山は、ここから少し離れて電話を始めた。
え。ホントに写真撮る気?
趣味悪い…。
『仲間が捕らえられて、黙っちゃいないでしょ?奴らがここに来る理由になるワケさ?…うーん。もうちょっと何か理由ほしいな…』
無言になる。何かを考えているようだ。
そして、沈黙の後。
彼は、とんでもないことを言う。
『…誰か、この『姫』を拉致監禁できない?』
「………」
拉致監禁…だから、犯罪!
「…だーかーら!犯罪はやめい!…拉致監禁?だから!これ以上犯罪に手を染めるな!」
すかさずそこは突っ込んでしまう。
というか、こんなに女子やら人間がたくさんいて、誰もツッコミを入れないのはなぜなんだ?
この兄ちゃん、突っ込んでやらないと、犯罪者になるよ!
この川越哲太っていう人、とても恐ろしい人!
みんな、気付いてる?!
『ごめんごめん。拉致監禁は言い過ぎた。ははっ。夏輝に怒られたー。…まあ、監禁しなくとも、明日の夜9時まで姫とマシュー総長らバヤセとの連絡を絶ってくれればそれで良いんだけど?この流れで姫とも連絡取れなくなれば、俺らの仕業と信じて疑わない状態になると思うからね?』
なるほど。
俺達に拉致監禁されてると思い込ませて、怒りを更に煽るのか。
そうなれば、乗り込みたくて乗り込みたくて仕方なくなるだろうな?
…なら、最初からそう言え。
怒られたー。じゃねえ!
「姫と接触、ということですか…」
「出身中学調べて地元の知り合い探します?…でも江別、知り合いいねぇー」
考え込んでいる菜月の横で、美梨也も顔をしかめている。
姫の知り合い…。
…あ。
「…あ、それ。ちょっと…」
「どしたい。竜堂」
そこ…宛てが。
《LINE交換致しましょう。お近づきの印に、近いうちに我が家へ招待致しますわ?》
《え、ホント?》
「…小笠原だ」
「おがさわら?」
「…あぁ、あの狭山さんのお友達のお蝶婦人かい?」
お蝶婦人…とてもイメージしやすい表現だ。
「小笠原、あいつ確か姫とLINE交換してるはずだ。家に招待するって…」
家に招待してどうするのか、ガス室に入れる予定だったのかもしれんが…。
「…あ、そうですか。なるほど。あの長蛇の列に並んでいたファンたちの一人なら、麗華嬢も把握しているというワケですね?」
菜月は察しが良いな。