王子様とブーランジェール
「…だってさ。狭山さん」
そう言う美梨也の隣には、いつの間にか電話を終えてこっちの話に参加していた狭山がいた。
「顧問が『バヤセの姫と連中の連絡を絶て』だそうです。麗華嬢が姫と接触したことがあるようですが…」
「ほう?麗華が。なら話は早いぞ?…なあ?麗華?」
すると、女子2人が赴いて、入り口のドアをガバッと開ける。
「…きゃあぁっ!」
ドアが開くと同時に、女子が数人バタバタとなだれ込んできた。
え?そこにいたの?!
「き、急に開けるんじゃありません!倒れるところだったじゃないの!」
「っつーか、フリージア押すな!」
「えー。だって話聞こえないんだもーん」
「おまえ、肉ブヨブヨしてっからだろ!おまえの肉、防音だろって!」
登場したとたん、またいつもの調子でモメ始めたぞ…。
なぜ、おまえらがここにいる…。
小笠原麗華。
あと、愉快な仲間たち…。
「…麗華、盗み聞きか?…私が気付かないと思っていたのかバカめ!」
「…あなどれない、エリお姐様!」
小笠原はそう言って、つかつかとこっちにやってくる。
「夏輝様、ごきげんよう?」と、いつもの挨拶を俺に見せるとすぐに、狭山にもの申し始めた。
「それよりエリお姐様、ひどくありませんか?コソコソして!」
「…は?コソコソ盗み聞きしていたのはおまえらだろ」
「そうではなくて!…これは、私達の夏輝様が困っていらっしゃる事件でしょう?なぜ私達にお声かけてくださらないのですか!」
「おいおい。日本舞踊の腕前と金しか持ってないおまえに何が出来るのだ。おまえが出てくると非常にめんどくさいぞ!バカめ!」
「お金があればいくらでも人にモノを言わせられます?それに、私が持っているモノはそれだけじゃございません!最近の宝は最近出来た楽しいお友達ですわ!オホホホ!」
バカめ!とオホホホ!の戦い…。
口論になり、高笑いしてる場合か。
それに、さりげに恐ろしい事を言ったのを、俺は聞き逃さなかったぞ。
それがセレブの鉄板思考か。
『おー。また際立ったキャラが登場したと思ったら、エリの友達のオガサワラリゾートの令嬢じゃないか』
セレブ二人を仲裁するように、パソコンのスピーカーから低い声が届く。
小笠原は、そのパソコンの存在に気付き、画面を見た。
「あら、可愛いワンちゃん」