王子様とブーランジェール
「木っ端微塵…」
「た、楽しみ…」
兄ちゃんの『木っ端微塵』というセリフに反応するかのように、女子らは横並びにニヤッと悪い笑みを浮かべる。
今、楽しみって言ったヤツ、いた。
全員、なぜかニヤニヤしてる。
まるで鬼のようだ。もしくは怪しい集団。
さすが、得意分野…何の?
「クックッ…現場指揮は任せろ。こういうことがあろうとも、面白い作戦を考えているのだバカめ!」
「ホントですか!狭山さん!」
「さすが、私達のボス!」
そして、怪しい鬼集団のボスが、一番悪い顔をして笑っている。
ここ一番のどす黒さだ。
そんなボスの面白い作戦発言に、ワッと沸き上がる残党の鬼女子たち。
もう、言葉を失うよ。
「この後、授業中に明日のプランについて考えとく!放課後、また集合!準備を行うぞ!」
「了解でーす!」
授業中は、勉強せい。
俺をつけ狙う連中は、早瀬高校のクソ不良ども。
総長の彼女が、俺に一目惚れしてしまい、(会ったこともねえのに…)嫉妬とプライドに狂ってしまったがため、この事件は計画的に行われた。
で、連中への反撃に、奴らをこの学校に呼び出し、叩きのめす。
…は、いいが。
「…兄ちゃん、やっぱこの作戦、無理あると思うんだよ」
パソコン越しに、酒屋の兄ちゃんに本音を打ち明ける。
画面には、依然としてポン太がきょとんとしてカメラ目線だが。
『無理って、何で?』
スピーカーからは、その低い声が問い返す。
「だって、呼び出しに成功したとしても、相手するのはこいつらだよ?良い作戦があるのか何なのかは知らないけど。それに、夜の学校ったって、警備員のおっさんや遅くまで残業してる先生とか、必ずしも誰もいない環境とは限らないじゃねえか。万全の環境なんて…」
愚痴のようにこぼしていると、「ははっ」と笑い声が聞こえた。
『…そこは、夏輝の仕事だろ』
「…は?俺?」
『ミスターの《特権》使ってよ?生徒会から聞いてない?』
「いや、聞いてるけど…」
『なら、学校動かしてよ?出来るだろ?』
学校…動かす?え?何?
「えっ…」
何のことか、何をしろと言われているのかわからず、少し固まってしまう。
すると、狭山が後ろから「おい、竜堂」と声をかけてきて、俺とパソコンの前に現れる。
「竜堂、放課後。生徒会室に一緒に来い」
「せ、生徒会室?」
何をしに?
「学校、動かしに行くぞ?」
「はぁっ?!」