王子様とブーランジェール
「…竜堂、頭は下げなくていい」
「え…」
顔を上げると、二村さんは自分の作った書類を手にして、「会長、行きますよ」と生徒会室を出ていこうとしていた。
立ち止まって、こっちを見る。
「…こっちは、ミスターに協力するって言ってるんだ。もう少し偉そうにしても、構わない」
「はぁ…」
「そういうことだから。…会長、急ぎますよ」
「おっ。はいはい」
そういうことって、どういうこと?
でも、まあ…いいのか。
出ていく二人を見送るカタチとなっていたが、立花生徒会長が引き返して俺のところにやってくる。
「あ、そうだ。ミスター竜堂」
「は、はい」
「私の生徒会長の任期、今月いっぱいまでだから。10月からは、二村が生徒会長。よろしく」
「はい…」
二村さんが生徒会長か。
…あ、そういや。二村さんに聞きたいことあったのに。
元ヤンなんですか?
なんて。
…もっと仲良くなってからにするか。
その後、俺は遅れて部活に行く。
部活が終わる頃には、生徒会室も家庭科室も誰もいなかった。
学校貸し切りの件、作戦の内容、どうなったんだ?
あれからの話の展開がわからず仕舞いで、帰宅することになった。
…しかし、その後の展開は、思わぬカタチで知ることになる。
翌日。普通に登校して朝練にも出て。
それでも、その後の展開は知らされず、ソワソワとしながら授業を受けていた時のことだった。
二時限目が終了し、その合間の休憩時間にスマホにLINEが来る。
画面を確認すると、サッカー部の学年マネであるあゆりから、部の学年ごとのグループラインに連絡が入っていた。
どれどれ。どうした。
…だが、その内容を見て、体が震えた。
《突然ですが、本日は5時に完全下校のため、部活は急遽休みとなりました。明日は野球部の全校応援には必ず参加、夕練は早めに3時練習開始、ミーティングあります》
本日は5時に完全下校…。
「えー?マジ?何でだ急に」
隣で恐らく同じグループラインを見てるであろう咲哉が、そう言いながらもちょっと嬉しそうにしている。
「うん…」
「親睦会で一年みんなでボーリング行く?」
「いや、俺はちょっと…」
これって、まさか。
本当に、学校を動かしてしまったというやつでは…!