王子様とブーランジェール
今、思い出したらだんだんムカッ腹立ってきたぞ。
このメスブタといい、理人といい。
俺の邪魔をしやがって…!
腹を抱えて爆笑を堪えている理人を睨み付ける。
そんな俺と目が合い、理人はますます笑いを堪えていた。
ちっ。野郎…。
「磯貝、ザマーミロ!!」
後ろから急に叫ばれたので、ビックリして体が震えた。
な、何だ急に!
「美梨也、急になした?」
「スカッとジャポンだっつーの!ザマーミロ!!」
美梨也だ。
何か、ニタニタしてる。
「この磯貝って女、2月にうちのクラスの十津川のこと笑い飛ばしてフッてんの。『とつくん?無理無理ー!』とかって笑い飛ばして」
「十津川?サッカー部の?」
おいおい。また知ってる人きたよ。
十津川さん?二年生のサッカー部の先輩だよ。
「しかも、磯貝、大河原のイボゴリラと同中で、とっちに告られたこと大河原に喋ってんの。で、とっちがみんなの笑い者になっちゃって…橋爪と私、二人でお怒りモードだったの。失礼くさくね?って」
橋爪さん…この人もサッカー部の先輩。十津川さんとよく一緒にいる。
美梨也と仲が良いのか。
「菜月さん、この動画ちょーだい!はっしーに見せて二人でザマーミロ!!って笑うから!」
「うん。いいよ?」
そう言って、菜月はまたカタカタとキーボードを打ち始めた。
美梨也は俺に親指を立てて突き出す。
「竜堂、グッジョブ!よくこの調子こきメスブタをバッサリ斬った!」
は、はぁ?!
突然で何のことやら…。
俺、良いことしたみたいになってる。
しかし、それに異論を唱える連中がいた。
「おいおいおい、美梨也。そのシメは、結局竜堂がメスブタを退治した英雄みたいな、竜堂が良いヤツになって話が終わってるではないかバカめ!」
「そーだそーだ。全然面白くないー」
「イケメンが英雄に奉られる結果なんぞ、ベタすぎて面白くもなんともないわ!」
狭山と奈緒美がブーブーと文句をたれている。
え?俺、良いヤツで終わっちゃダメなのか?
ようするに、俺の失態を笑ってバカにして終わりたいと。
何てヤツらなんだ。こいつらは…。
すると、菜月がパソコンに向かいながら、クスクスと笑う。
「エリ、奈緒美。そこのところは大丈夫。あの面白すぎるおんぶ動画、あまりにも面白すぎて、記念に一枚パネル作ったから」
「はい!作りました!じゃじゃん!」
美梨也の手にはいつの間にか、A4サイズの写真パネルが。
写真はもちろん、俺が嵐さんにおぶられてラブホテルに入っていく写真…。
「っていうか、何こんなもん作ってんだよ!」
「竜堂面白記念だよ。昨日の夜作っちゃいました!欲しい?」
「いるかこんなもん!」
あのなぁ…。