王子様とブーランジェール
体全体がザワザワしており、止まらない。
まさか。まさか、本当にこんなこと出来ちゃうのか?
結果は、そういうことか…。
しかし、これでお膳立ては出来た。
作戦は決行だ。
そのうち、尾ノ上さんからも『放課後、家庭科室ね』とこっそり伝言が入った。
本当に本当に作戦決行だ。
今晩、本当に奴らと対峙するのかと思うと。
体のザワつきが治まらない。
怒りなのか、緊張なのか。武者奮いなのか。
わからない。
だけど、変わらず思っていることは。
…絶対、あいつらブッ殺してやる。
そして、本日の授業が全て終わり。
ホームルームも終わって、放課後になる。
先の通り、本日は完全下校となるため、どの部活もお休みであり、いつもとは違う光景だ。
みんな、これから遊びに行く話をしながらだらだら教室を出ていっている。
「…あれ。陣太は部活?」
「完全下校でしょ?」
ぞくぞくと下校するみんなとは違い、陣太は教室でカバンを開けて部活に行く準備をしていた。
「明日試合だし。でも何か知らんが急に学校使えなくなったから、大学のグランド借りて練習すんだ。これから移動」
「へぇー。大変だな」
「今日はもう学校に入れないみたいだから、朝に集合しなきゃいけねえんだよ。めんどくさ」
「ふーん。ま、明日頑張れよ?応援しに行くわ」
「頼むなー」
カバンを担いで手を振りながら教室を出ていく陣太に、理人も手を振り返している。
そうか。
こんな弊害もあるのか…!
大事な試合の前日だというのに。
陣太、ごめん。
野球部、ごめん。
「…で、何でおまえいんの?」
クラスメイトは早々にいなくなり、陣太も部活へと出かけ、この教室には俺ともう一人しかいない。
理人…スマホでゲームをしている。
「…おまえ、帰らねえの?」
「うん、帰らないよ。だってこれからイベントに参加するし。バイク品評会とレクリエーション」
「………」
この根っからの野次馬め。
「ケンカも出来ないおまえが戦力になるか。帰れ帰れ」
「安全なところで見学するから気にしないで。あ、食料調達にコンビニ行ってくる。何か買ってくる?アイスコーヒーでいい?」
「………」
あのなぁ…。
ゲームが終わったのか、理人はスマホをポケットに入れて教室を出ていった。