王子様とブーランジェール
「…お、おまえなぁ?!」
「あははは!リッフィから聞いてるぜい?この話を初に耳にしたときのダンナのリアクション、分かりやすく面白かったってさー!お茶ブー!みたいな?」
お茶ブー…したね。
姿、想像…したよ。後夜祭の花火をバックに…。
「…何でそんなこと武勇伝みたいに語るんだっつーの!」
「あれあれ。おたくもあるでしょ?武勇伝。リッフィからいろいろ聞いてますよーん?」
理人…余計なことばかりベラベラ喋りやがって。
でも、聞きたいことは聞きたい。
「柳川とのこと、ホントなの?」
すると、松嶋はますますニヤニヤする。
「うししし…女から求められたら受け入れてやらねと。女性に恥をかかせるワケにいきませんからね?」
女の方から…!
「でも、付き合ってないんだろ?」
「優未にはもう新しいカレシがいるからにゃ?お友達お友達。今も仲良し。カレシの相談のってやってるし」
「………」
そこは、わからん…。
体だけの関係で、今もお友達でいられるなんて。
わかるようで、わからん…。
「でもおまえ、藤ノ宮は…」
何となく目が行ってしまう。
ここから遠くの位置にいて、美梨也とスマホ見ながら談笑している、藤ノ宮を思わず見てしまう。
何の話をしたいのか松嶋は気付いたようで、『あはは…』と、苦笑いをしていた。
「あーあー。律子の話?アイツはほっといて。何かと付きまとってきては小言ばかり言うし、束縛してくる。嫌だわー」
「だってそれは、松嶋おまえを好きすぎて…」
「…俺なんかのどこが良いんだかね。やっぱ女は愛敬さ。優未みたいに『抱いてー!』って、素直で可愛いのが良い良い」
松嶋は自覚してるのか。
藤ノ宮に好かれてるっていうことを。
「ダンナの武勇伝も聞きたいな?だって桃李のことずっと大好きなのに、カノジョ何人もいたんでしょー?」
そう言いながら、俺の顔をニヤニヤと覗き込んできた。
「ばっ!…俺は伏せとく派だ!」
「えー?つまんなーい。そういうワイ談してもっと仲良しになろうってー」
ワイ談で仲良しになろうって…バカか。
「バカヤロー。そういう話は門外不出にしとけ。ついでに柳川とのエロ話を桃李に聞かせるな。ついでに桃李にセクハラするな。あんなエロ画像見せるな!」
話の流れで、桃李についてつい忠告してしまう。
しまった…と、思っていると松嶋はここぞとばかりに楽しそうな表情をしていた。