王子様とブーランジェール
「えー?やきもちー?ジェラシー全開だね。エロ画像見せるなって、過保護すぎでしょ。お父さん?」
「うるっせぇな!」
「前にも言ったけど、俺は桃李に手を出さんからね?すげー可愛いとか、ギュッとしたいとかは思ったことあるけど」
「…おまえぇっ!っつーか、腹つかんだりギュッとしてるだろが!」
「え?それもダメなの?」
「当たり前だろが!桃李に触るな。見るな。近付くな!」
「見るなと近付くなは無理じゃない?桃李、ぼっちになるよ?そこは必死に堪えて?」
「あぁ?!そういう意味じゃねえ!距離感の問題だ!」
「でも、触るなは気をつけまーす。友達が溺愛しまくっている女子に手を出すほど鬼畜じゃありませーん」
「友達…」
「いい加減俺達も腹割って友達になろうよ。ね?ね?じゃあまず俺、ダンナって呼ぶのやめる。主従関係ちっくだしね。お互いフラットでいこう」
「………」
勝手にダンナと呼び出したのも、おまえだし。
なぜそんなことにこだわるんだ。
警戒してるの、気付かれていたんだな…。
「夏輝だからナッティーって呼ぶ」
「いや、普通に名前呼んでくれや」
松嶋とお喋りをしていたら、もう7時10分前だ。
家庭科室内の慌ただしさは変わらない。
「…美咲!」
狭山が入ってくるなり、尾ノ上さんを呼びつけている。
「は、はい!」
尾ノ上さんは、家庭科室のテーブルで網を丸めていた。
それ、もしかして投網?
投網バズーカ、また使うの?
作業を中断して、尾ノ上さんは狭山のもとへ行く。
「…人数足りないから、やっぱ美梨也はこっちに来てもらう。だから、あれの操作はおまえがやれ」
「…えぇっ!そ、それは無理ですよ!」
尾ノ上さんはビックリしており、首を振って狭山の要望を拒否している。
だが、狭山は悪そうな顔で尾ノ上さんの肩を叩く。
「なぁーに。レバー3つぐらい動かせるだろ?美梨也に教えてもらえ。一時間で覚えろ」
「…えぇーっ!」
何動かすの?
さっき、松嶋は藤ノ宮に連れて行かれてしまい、俺がぼっちになってしまった。
理人は、そこらへんでブラブラしていたところ、菜月に『暇してるんですか?なら手伝ってください』と、連れて行かれた。
俺にも何か手伝わせてくれ。
周りが働いてるのに、一人だけ何もしないのは性分じゃない。
じっと座っていられないので、学校内をブラつく。